映画評価

映画『正欲』レビュー

レッド

”行き過ぎた多様性の描写”

監督は『あゝ、荒野』が主要映画賞で多数の賞を獲得し、前作『前科者』では希望と再生の物語を感動的に描いた岸善幸

キャストには稲垣吾郎さんや新垣結衣さんなど珍しい組み合わせで興味を惹かれましたが、作品自体のクオリティは評価に苦しむ結果となってしまい正直言ってつまらない映画となってしまったことが残念です。

ネタバレは多少ありますので一応ネタバレ注意とさせていただきます。

それでは映画『正欲』のレビューをしていきたいと思います。

作品紹介・あらすじ

作品紹介

原作は朝井リョウによる長編小説。読者の価値観を激しく揺さぶる内容が多くの読者の支持を得てベストセラーとなり、第34回柴田錬三郎賞を受賞発行部数はすでに50万部(2023年10月現在)を突破、「これまでの価値観を覆す読書体験」として大いなるうねりを生み出している。
主人公の啓喜を演じるのは稲垣吾郎。唯一無二の存在感を放ちながら、市井の視点で啓喜を演じ、観客を映画世界へいざなう。新垣結衣が夏月の複雑な心のひだを繊細に演じ、今までに見たことのない表情を魅せる。夏月と感情を共有していく佳道を演じるのは磯村勇斗。表情、発声、身体で観客の脳裏に佳道を焼き付ける。台詞だけでなく、ダンスシーンでも大也の感情を発露させるのは佐藤寛太。誰もが持つ心の弱さと強さを、本作が映画初出演の東野絢香が八重子役で体現する。

監督は、『あゝ、荒野』が主要映画賞で多数の賞を獲得し、前作『前科者』では希望と再生の物語を感動的に描いた岸善幸。登場人物それぞれのキャラクターに寄り添うように、ラストシーンまでを丹念に描き出している。脚本は、『あゝ、荒野』でも岸とタッグを組んだ港岳彦が務め、壮大な原作世界を映像に置き換える挑戦を成功させた。映画音楽は『レッドクリフ』シリーズ、『殺人の追憶』の岩代太郎。 主題歌「呼吸のように」を手掛けたのは、類まれなる音楽センスで絶大な人気を誇るVaundy。本作で初めて映画主題歌を担当した。映画世界を端的に凝縮した、かけがえのない人とのつながりを歌うその楽曲は、深い余韻を本作の最後に響かせる。

映画『正欲』公式サイト (bitters.co.jp)

あらすじ

横浜に暮らす検事の寺井啓喜は、息子が不登校になり、教育方針を巡って妻と度々衝突している。広島のショッピングモールで販売員として働く桐生夏月は、実家暮らしで代わり映えのしない日々を繰り返している。ある日、中学のときに転校していった佐々木佳道が地元に戻ってきたことを知る。ダンスサークルに所属し、準ミスターに選ばれるほどの容姿を持つ諸橋大也。学園祭でダイバーシティをテーマにしたイベントで、大也が所属するダンスサークルの出演を計画した神戸八重子はそんな大也を気にしていた。

同じ地平で描き出される、家庭環境、性的指向、容姿     様々に異なる背景を持つこの5人。だが、少しずつ、彼らの関係は交差していく。
まったく共感できないかもしれない。驚愕を持って受け止めるかもしれない。もしくは、自身の姿を重ね合わせるかもしれない。それでも、誰ともつながれない、だからこそ誰かとつながりたい、とつながり合うことを希求する彼らのストーリーは、どうしたって降りられないこの世界で、生き延びるために大切なものを、強い衝撃や深い感動とともに提示する。いま、この時代にこそ必要とされる、心を激しく揺り動かす、痛烈な衝撃作が生まれた。     もう、観る前の自分には戻れない。

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感想

本作は家庭環境や性的指向の異なる複数の人物を描いており、他者に共感されないことや認めてもらえないことに悩みそれでも誰かとつながりたいと願う人たちの物語。

それぞれの希代な癖をもっている登場人物を描きたいのは作品を通して感じとれますが、描写が露骨に感じてしまうところが多々ありました。その理由が登場人物の一人の水にしか興奮することができないといった人物の描写。

数万人いたら一人いるかどうかといった稀な癖をもっていることで、”みんな違ってみんな良い”といった多様性のようなものを描写していきたいのは理解できますが、この作品では登場人物を絞って描写できていないため、複数人いるキャラクターに感情移入しにくい作品となってしまっています。

多様性を描くために様々な他人に理解し難い悩みを描かなくてはと思ったのかもしれませんが、ただ珍しい性的指向を複数描くだけでは、多様性を巧みに描けているとは言い難いと感じました。

当然、共感できなくもない登場人物もいます。男性を苦手とする女の子や家庭に悩みを抱える男性には共感できなくもないですが、それでも焦点を絞って人物を描いている作品と比べれば内容は薄いと感じます。

また水フェチのキャラクターを描く際に公共の物を壊すシーンがありますが、これでは多様性の前に人としての人格が疑われます。人に理解されない性的指向があるのは理解できますが、そのためにマナー違反をするのは理解できません。

またオチも適当でラスト付近の展開には納得がいきませんでした。無理やり着地させたような最後で大した証拠写真や動画から二人の登場人物が大変なことになりますが、リアリティに欠けていてつまらないと感じてしまいました。

描きたいことは作品を見れば理解できますが、多様性を描く能力が制作陣には圧倒的に足りていないため視聴者に全く共感されずつまらない作品になってしまったのだと感じました。

キャストには稲垣吾郎さんや新垣結衣さんなど珍しい組み合わせで興味を惹かれましたが、作品自体のクオリティは評価に苦しむ結果となってしまったことが残念です。ネタバレになってしまうのでこれ以上のストーリーに触れたレビューはできませんが、人に進んで勧められる映画ではないといった感想です。

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