映画『リバー、流れないでよ』レビュー
”『ドロステのはてで僕ら』のスタッフが今回もやってくれました”
『ドロステのはてで僕ら』に続き、上田誠が原案・脚本ということで期待値を上げて観に行きましたが、本作も非常に面白い映画となっていました。
「タイムリープ」というジャンルは使い古されたジャンルではありますが、2分間という徹底した時間管理と、『ドロステのはてで僕ら』と同様ワンカットでの撮影を上手く生かした斬新な映画となっていました。
ネタバレはなしでレビューしていきますので、初見の人も安心してレビューを見てください。
それでは映画『リバー、流れないでよ』レビューをしていきたいと思います。
作品紹介・あらすじ
作品紹介
『夜は短し歩けよ乙女』『四畳半タイムマシンブルース』の脚本や、『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』日本語吹替版脚本を手掛ける上田誠率いる劇団ヨーロッパ企画。本作『リバー、流れないでよ』は、世界27ヵ国53の映画祭で上映&23もの賞を受賞した第1弾『ドロステのはてで僕ら』に続き、上田誠が原案・脚本を、映像ディレクターの山口淳太が監督を務める、ヨーロッパ企画制作によるオリジナル長編映画第2弾。
京の奥座敷と呼ばれる貴船を舞台に、繰り返す2分間のループから抜け出せなくなってしまった人々の混乱を描く群像劇。老舗料理旅館「ふじや」で働く仲居ミコト役の藤谷理子(ヨーロッパ企画)、料理人見習いのタク役の鳥越裕貴をはじめ、本上まなみ、早織、そして近藤芳正。更にもちろん永野宗典、角田貴志、酒井善史、諏訪雅、石田剛太、中川晴樹、土佐和成らヨーロッパ企画メンバーも出演。また、乃木坂46の久保史緒里が物語の鍵を握るキャラクターで友情出演を果たす。主題歌として、京都出身のロックバンド・くるりが、EP作品『愛の太陽 EP』の収録曲「Smile」を楽曲提供。木管楽器がフィーチャーされたあたたかいムードの楽曲が、ドラマを盛り上げる。
ロケは、貴船神社と料理旅館「ふじや」の全面協力を得て、2023年1月に敢行。1月24日から、10年に1度と呼ばれる最強寒波直撃による豪雪で撮影中止に追い込まれるも、奇跡のリカバーで2月〜3月に追撮を行うことができ、無事に完成。凛とした静寂を纏う冬の貴船と、2分のループという新たな時の牢獄から抜け出すべく必死な大人たちのギャップが楽しい、前人未到のタイムループコメディがここに誕生した。
映画『リバー、流れないでよ』公式サイト (europe-kikaku.com)
舞台は、京都・貴船の老舗料理旅館「ふじや」。
静かな冬の貴船。ふじやで働く仲居のミコトは、別館裏の貴船川のほとりに佇んでいたところを女将に呼ばれ仕事へと戻る。
だが2分後、なぜか再び先ほどと同じく貴船川を前にしている。
「・・・・?」ミコトだけではない、番頭や仲居、料理人、宿泊客たちはみな異変を感じ始めた。
ずっと熱くならない熱燗。なくならない〆の雑炊。永遠に出られない風呂場。自分たちが「ループ」しているのだ。しかもちょうど2分間!2分経つと時間が巻き戻り、全員元にいた場所に戻ってしまう。
映画『リバー、流れないでよ』公式サイト (europe-kikaku.com)
そして、それぞれの“記憶”だけは引き継がれ、連続している。
そのループから抜け出したい人、とどまりたい人、それぞれの感情は乱れ始め、
それに合わせるように雪が降ったりやんだり、貴船の世界線が少しずつバグを起こす。
力を合わせ原因究明に臨む皆を見つつ、ミコトは一人複雑な思いを抱えていた―――。
感想
本作では『ドロステのはてで僕ら』と同じくワンカットでの手法で制作されており、同じ場所で2分間を繰り返すといった設定を巧みに生かしています。2分間という時間は決して長い時間ではないため出来ることも限られてきます。その2分間という時間で登場人物が「タイムループ」から抜け出すために試行錯誤し行動するのは映画という媒体でここまで面白い作品にすることが出来るのだと驚かされました。
2分間という時間をワンカットで時間管理が行われているため、2分間という時間が時には早く感じる時もあれば、遅く感じる時もあったりと同じ時間であるのにも関わらず、違った感覚にさせてくれるのは面白いです。
また舞台となった場所を上手く生かしている点も非常に評価できるポイントです。その場所でしかできない行動だったり、川から旅館までの距離だったりと徹底的に2分間という制約の中での行動や展開が考えられており、この点は『ドロステのはてで僕ら』と同様の評価点となっています。
2分間という時間なので出来ることは限られてきますし大きな事はできません。映画自体も低予算で制作された作品であることは一目瞭然です。しかし2分間という時間を巧みに生かしたストーリー構成だったり、徹底的なまでの時間管理は斬新であり、こういうアイディアを最大限生かした映画はもっと多くの人から評価されるべき作品だと思います。
総評
『ドロステのはてで僕ら』と同じくワンカットでの手法で制作された映画の中でも斬新な作品となっています。2分間という時間を映画の中に見事に生かしきっており、ワンカットで制作したことによる面白さが映画から伝わってきます。
映画ではあるもののどこか舞台を見ているような感覚の作品で、見方を変えるとこのような舞台的に見えることを苦手と感じる人もいるかもしれません。しかし、舞台としての面白さを映画の中で最大限発揮されている映画でもあるので刺さる人には刺さる映画だとも言えます。
こういう斬新な手法と、アイディアで映画業界に新しい風を吹き込んでくれる作品はとても杞憂で貴重な作品だと思います。小規模公開なので、知名度的にも興行収入の観点からしてもあまり良い作品ではありませんが、映画としての面白さは確かなものなので数字で評価せずに、実際に観て評価してほしい作品です。