オススメ

映画『アリスとテレスのまぼろし工場』レビュー

レッド

”人を選ぶが傑作級の岡田麿里作品”

監督は『空の青さを知る人よ』で脚本、『さよならの朝に約束の花をかざろう』で監督と脚本を務めた岡田麿里。

上記の作品のどちらも癖がありながらも、魅力的なキャラクターとメッセージ性を描ききった岡田麿里の監督作品ということで、公開日が楽しみであった映画です。

本作も非常にキャラクターが人間味があるのですが、難解で考察の捗る作品となっています。

ネタバレは多少ありますので一応ネタバレ注意とさせていただきます。

それでは映画『アリスとテレスのまぼろし工場』のレビューをしていきたいと思います。

作品紹介・あらすじ

(9) 映画『アリスとテレスのまぼろし工場』ファイナル予告 2023年9月15日(金)公開 – YouTube

解説

「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」などの脚本家として知られ、「さよならの朝に約束の花をかざろう」で監督デビューを果たした岡田麿里の監督第2作で、「呪術廻戦」のアニメーション制作会社・MAPPAとタッグを組んだオリジナル劇場アニメ。

製鉄所の爆発事故によって全ての出口を閉ざされ、時まで止まってしまった町。いつか元に戻れるように「何も変えてはいけない」というルールができた。変化を禁じられた住民たちは、鬱屈とした日々を過ごしている。中学3年生の菊入正宗は、謎めいた同級生・佐上睦実に導かれて足を踏み入れた製鉄所の第五高炉で、野生の狼のような少女・五実と出会う。

「呪術廻戦」の榎木淳弥が主人公・正宗、「私に天使が舞い降りた!」の上田麗奈が同級生・睦実、「リコリス・リコイル」の久野美咲が謎の少女・五実の声を担当。製作陣にも副監督の平松禎史、キャラクターデザイン・総作画監督の石井百合子、美術監督の東地和生ら、「さよならの朝に約束の花をかざろう」のメインスタッフが再結集。「空の青さを知る人よ」の横山克が音楽を手がける。

2023年製作/111分/G/日本
配給:ワーナー・ブラザース映画、MAPPA
劇場公開日:2023年9月15日

アリスとテレスのまぼろし工場 : 作品情報 – 映画.com (eiga.com)

感想

本作は、「変化」という言葉に焦点の当てられた映画となっています。製鉄所の爆発事故によって全ての出口を閉ざされ「変化」をすることができなくなってしまう。変化をしてしまったものは空間にひびが入るのと同じようにその世界から消えてしまう。

いつしか大人たちは、このまま何も変えなければいつか元に戻れると信じて自分確認票というものを作り今の自分を見失わないように自分の名前や住所、好きな人、嫌いな人を明記し記入させていた。

一部の大人たちはその状況を受け入れることができたが、これから無限大に夢や人生が広がっている思春期の子供たちにとってはあまりにも酷な状況となってしまっている。叶えたい夢がある少年や、好きな人とこれからの人生を歩みたいと思ってる少女、しかし世界は「変化」をすることを許してはくれない。

自分の恋心を打ち明け告白し失恋してしまう少女、今の自分を変えようと行動した少女は世界から消されてしまう。脚本家が岡田麿里さんということもあり登場人物の恋愛模様をリアルに描いており、ある種告白という行動も今の自分から一歩踏み出していくこと。「変化」を望む行動でこの世界観において岡田麿里脚本で面白くないはずがなくラストまで目が離せないストーリーとなっていました。

序盤こそ普通ではない世界観や、痛覚の鈍い登場人物など不気味な描写が目立ち後半に生かされる伏線を張り巡らせている。脚本としてのクオリティは高いが、話のテンポが良いとは言えない。そのため、観ている人の中でも退屈に感じてしまうかもしれません。

この物語は製鉄所の第五高炉で出会った少女・五実が鍵となっており、「変化」を嫌う大人たちは製鉄所の第五高炉に少女を閉じ込めていました。しかし、この少女に外の世界を見せようと主人公が連れ出したことによって物語が大きく動き出します。

五実は菊入正宗と佐上睦実に非常に関りの強いキャラクターでストーリーが進むにつれて、その正体が徐々に明らかになっていきます。また、閉ざされてしまった世界「「何も変えてはいけない」ルールの世界において五実は心に大きな変化が生じて世界が大きく揺るぎ始めます。

序盤で貼られた伏線が後半に怒涛の回収が行われ、クライマックスシーンを盛り上げていきます。特に終盤の睦実と五実の掛け合いは、まさに岡田麿里脚本だなと感じる部分でもあり必見だと思います。


総評

「何も変えてはいけない」というルールがある世界で、自分自身を変えようと動き出そうとする人たち、このままで良いと考える人たちと異なる視点で物語を展開していく。その中に岡田麿里という脚本家の恋愛の要素が加わることで非常に見応えのある映画となっている。

しかし、監督業と脚本の両方を担っているためか、一つのシーンを長回しで撮影しているところがあり間延びしてしまっているようにも感じられた。おそらく、自分が観ている人に伝えたいシーンや見せたいシーンへのこだわりが強く一つ一つのシーンがやたら長く感じるところが多くなってしまっているような感想を抱いてしまいました。

また、物語を考察しながら楽しめる反面、ストーリーが難解に感じてしまう人や映画の世界観が理解できない人も出てきてしまう映画でもあると感じました。セリフ回しやストーリーの質が高いだけに人を選ぶ作品になってしまったのは少しもったいないと感じました。

しかし、個人的には岡田麿里脚本の魅力が充分に発揮されていて非常に楽しめた作品でした。原作のないオリジナルアニメでここまでの完成度に仕上げてきた岡田麿里監督の手腕は素直に評価できると感じました。前作の『さよならの朝に約束の花をかざろう』は展開が早すぎると感じましたが、本作では展開がゆっくりしているのが極端で面白いです。

Twitterからの読者コメントをお待ちしています。
ブログ更新の励みになります!
フォローお願いします。
ABOUT ME
記事URLをコピーしました