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映画『朝が来る』レビュー

レッド

”子供を育てることについて改めて考えさせてくれる作品”

監督と脚本と撮影は河瀨直美。

キャストは永作博美、井浦新、蒔田彩珠、浅田美代子などとなっています。

辻村深月さんの原作ということと、河瀨直美監督の作品ということで期待して観に行った作品です。観た感想としては邦画の中でも5本の指に入るくらいの傑作だと感じました。

物語の核心に触れるネタバレはしていませんが多少のネタバレは含みますのでネタバレ注意でお願いします。

それでは映画『朝が来る』レビューをしていきたいと思います。

作品紹介・あらすじ

作品紹介

世界で高い評価を受け、カンヌ国際映画祭では欠かせない存在となった河瀨直美監督の待望の最新作は、直木賞・本屋大賞受賞のベストセラー作家・辻村深月によるヒューマンミステリーの映画化。実の子を持てなかった夫婦と、実の子を育てることができなかった14歳の少女を繋ぐ「特別養子縁組」によって、新たに芽生える家族の美しい絆と胸を揺さぶる葛藤を描く。永作博美、井浦新、蒔田彩珠、浅田美代子ら実力派俳優が、人間の真実に踏み込む演技で圧倒する。血の繋がりか、魂の繋がりか──現代の日本社会が抱える問題を深く掘り下げ、家族とは何かに迫り、それでも最後に希望の光を届ける感動のヒューマンドラマが誕生。

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あらすじ

一度は子どもを持つことを諦めた栗原清和と佐都子の夫婦は「特別養子縁組」という制度を知り、男の子を迎え入れる。それから6年、夫婦は朝斗と名付けた息子の成長を見守る幸せな日々を送っていた。ところが突然、朝斗の産みの母親“片倉ひかり”を名乗る女性から、「子どもを返してほしいんです。それが駄目ならお金をください」という電話がかかってくる。当時14歳だったひかりとは一度だけ会ったが、生まれた子どもへの手紙を佐都子に託す、心優しい少女だった。渦巻く疑問の中、訪ねて来た若い女には、あの日のひかりの面影は微塵もなかった。いったい、彼女は何者なのか、何が目的なのか──?

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評価点

  • 子供を育てること、親になるということ
  • 演出とストーリーのテンポ
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子供を育てること、親になるということ

本作では、子供を授かりたくても子供に恵まれなかった夫婦と実の子供を育てられなかった母親の視点で物語が展開されていきます。栗原清和と佐都子の夫婦は「特別養子縁組」という制度を知り片倉ひかりから男の子を託してもらう訳ですが二つの視点から描く子供を育てるということに対するテーマを見事に描ききっていました。

14歳という若さで純真な恋をして妊娠してしまうひかりですが、今後の自分の人生すら未知の段階で子育ては難しく子供を育てることを断念せざる負えない。本当は子供を育てたかったのに育てられない片倉ひかりを完璧に演じきっている蒔田彩珠。

彼女の演技からは栗原清和と佐都子に子供を託す際に本当は自分の手で子供を育てたかったという無念さのような感情が演技の中から伝わり複雑な感情を演技の中で表現することは難しいと思うのですがそれを完璧に表現していたと感じました。

また、子供には恵まれなかったものの生みの親の片倉ひかりから子供を託され正式な親になることができた栗原清和と佐都子を演じた井浦新と永作博美も素晴らしく、子供を育てられなかった片倉ひかりの想いを汲み取り朝斗を大切に育てていこうとする夫婦を完璧に演じていました。

二つの視点はどちらも難しい役柄で役者の技量が試されると思いますが、キャスト全員が素晴らしいのですが、その中でも蒔田彩珠の演技は圧巻でした。映画を観ている最中はフィクションであることを忘れ実際に起こった出来事を鑑賞しているような感覚になりました。キャスティングにおいて文句のつける箇所は一つもなく完璧だと思います。

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演出とストーリーのテンポ

河瀨直美の演出の特徴であると感じるのが、実際に起きた場面を切り取ったようなリアリティのあるカット。そのカットに河瀨直美の独特な演出が加えられ作品との世界観や作風がマッチした時に、他の映画にはない傑作が誕生されますが、本作がまさに原作と河瀨直美の作風が完璧にマッチした作品であると感じます。

感情の変化を「光」の演出していて、キャラクターの感情の変化に合わせて映画全体のトーンを演出によって表現しているのは映画を観ている人に対しての信頼を感じますし、制作陣の映画に対する想いも感じとれます。下手な演出では登場人物の感情をセリフでしか伝えられないため、テンポも悪くなりますし説明口調のセリフから違和感を感じとれてしまい映画から気持ちが離れてしまうことに繋がってしまいます。

その点、本作はストーリーの流れが自然でテンポも非常に良く進んでいきます。片倉ひかりの14歳から現在までの人生を描いているためストーリーのテンポが良いことは、映画を通して伝えたいことを余すことなく伝えられることと同時に、観ている人も最後まで集中して映画を鑑賞することができるため評価できるポイントだと思います。

映画の中で、片倉ひかりと栗原清和と佐都子の夫婦の人物を丁寧に描けているからこそ、朝斗を育ててあげたかった片倉ひかりの感情にも共感できるし、6年間託してもらった子供を一生懸命育てた栗原清和と佐都子の夫婦にも感情移入することができます。

そのため、最後の展開で心が掴まれるような感覚と同時に自然と感動することができます。主題歌も「アサトヒカリ」という曲名ということもあり曲にもこだわりを感じますし、エンドロールまで隙のない演出には感服させられました。

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総評

朝斗にとっての親は育ての親の栗原清和と佐都子の夫婦だけでなく、親権こそ片倉ひかりから夫婦に移ってはいるものの生みの親である片倉ひかりも大切な朝斗の母親なのだとストーリーを通して一貫して伝えているのは素晴らしいと思いました。

14歳のひかりから貰った手紙を佐都子が最後に改めて読み直すシーンで消しゴムで消された文章がひかりの人生を象徴している。同時に、佐都子とひかりが一つに繋がる瞬間でもある。

子供を産み育てるということは決して当たり前のようにできることではなく、産みたくても産めない人、育てたくても育ててあげられない人がいること、だからこそ子供は尊い存在であり親として大切にしていかなければならない存在なのだと改めて気付かせてくれる作品でした。

映画を通して伝えたいことを映画の上映時間を無駄なく不足なく伝えている点は素直に評価できるポイントですし、全ての人に観てもらいたい映画です。間違いなく傑作と呼ぶに相応しい作品なので、まだ観ていない人は一度は観るべき作品だと思います。

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