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映画『岬のマヨイガ』レビュー

レッド

”学べることが多い児童文学作家の映画化作品”

監督はアニメ「のんのんびより」シリーズの川面真也。脚本は「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」シリーズの吉田玲子となっています。

キャストは主人公の声を芦田愛菜が担当しています。まず「のんのんびより」と「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」どちらも素晴らしい作品であることから非常に期待の高かった作品です。

鑑賞後の感想としても学べることが多く、ストーリーとしてもツッコミどころはありますが高い完成度の作品だと思いました。

ネタバレは多少ありますので一応ネタバレ注意とさせていただきます。

それでは映画『岬のマヨイガ』レビューをしていきたいと思います。

作品紹介・あらすじ

作品紹介・あらすじ

児童文学作家・柏葉幸子が東北の民話を盛り込みながらつづった同名ファンタジー小説をアニメーション映画化。ある事情から家を出た17歳のユイと、両親を事故で亡くしたショックで声を失った8歳のひより。それぞれ居場所を失った2人は、不思議なおばあちゃん、キワさんと出会い、岬に建つ古民家「マヨイガ」で暮らすことに。そこは“訪れた人をもてなす”という、岩手県に伝わる伝説の家だった。マヨイガとキワさんの温もりに触れ、2人の傷ついた心は次第に解きほぐされていく。そんなある日、「ふしぎっと」と呼ばれる優しい妖怪たちがキワさんを訪ねてマヨイガにやって来る。主人公ユイの声を芦田愛菜が演じる。アニメ「のんのんびより」シリーズの川面真也が監督を務め、「ヴァイオレット・エヴァーガーデン」シリーズの吉田玲子が脚本を担当。

2021年製作/105分/G/日本
配給:アニプレックス

岬のマヨイガ : 作品情報 – 映画.com (eiga.com)
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感想

本作は震災を扱っているだけあり映像面や描写に東日本大震災の恐ろしさを知っている人ほど心をえぐられる。監督が「のんのんびより」の監督ということもあり風景描写が凄まじく、この映画で当時の震災を知っている人ほど恐ろしさを感じるのは背景描写のクオリティが非常に高いからだと思います。

この映画では二人の女の子と彼女たちとは無縁のキワさんという老婆が一つ屋根の下で暮らすことになるのですが、キワさんは面識も何もない彼女たちの居場所を提供してくれる優しいお婆さんで、震災後は不自由な暮らしを強いられる人が多く穏やかな感情でいられる人の方が珍しい。

そんな中、二人と面識も何もない人が迎え入れてくれるという状況自体キワさんの優しさが際立っていると言える。三人は協力してお互い助け合いながら暮らしをしていくことになるのですが、震災の直後で物資も安定していない状況の中豪勢な料理を二人の女の子に出して、まだ幼い二人の女の子の心の痛みを少しでも癒してくれようとするキワさんには心を温かくしてくれます。

またキワさんからの愛情を受けて主人公のユイとひよりは少しずつ愛という感情が育まれ、他の人にも愛情をもって接することができるようになっていきます。この二人の成長していく過程が本当に微笑ましく心地よい感情にさせてくれます。

序盤では、このようにゆっくりと三人の暮らしの描写が丁寧に描かれていくのですが、彼女たちが暮らしている家はマヨイガ。中盤以降は序盤の展開とは一変、妖怪が出てきたり雰囲気がガラリと変わります。ここは賛否分かれる点かもしれません。

ひよりちゃんは交通事故で両親を失い、頼みの綱である親戚も震災で亡くしてしまっている。自分は何も悪いことはしていないのに不幸な事が次々に起きてくる心理的なショックで声を失ってしまう。

被災者の人達は誰しもが思う感情で、自分が何かしたわけでもないし悪いことをしたわけでもない、それなのにも関わらず震災によって色々な物が失ってしまう。まさに震災の被害というものを適切に描写されていると言っても過言ではない。

妖怪はそんな人達の感情から生まれると負の感情から生まれる妖怪もいれば、その逆のポジティブな感情から生まれる妖怪もいる。後半の展開は負の感情から生まれた「アガメ」という妖怪に立ち向かう物語になっていく。それは自分自身との負の感情に立ち向かうことでもあり、観ている人にとっても他人事ではありません。

キワさんとひよりちゃんと過ごし愛を知ったユイが自分自身と向き合い成長する過程や、ひよりちゃんの失われてしまった「声」の結末と沢山の見所が詰まった映画だと感じました。

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総評

児童文学が原作ということと、優秀な監督と脚本家に恵まれたこともあり映画から学べることが多い作品だと思います。自分の負の感情と向き合い乗り越えていくことを、「アガメ」という負の感情から生まれた妖怪に立ち向かう展開に置き換えているため子供にも分かりやすく楽しめるように作られていると感じました。

ユイとひよりがキワさんというお婆さんと過ごすうちに愛情を受けて、他者にも愛をもって接することができるようになったり、過去の自分から一歩踏み出すことができるようになったりと成長の過程が丁寧に描写されていて、観ていて心地良い作品だと思います。

しかし、比喩自体は分かりやすいという利点があるものの、中盤以降はファンタジー感が強くなり序盤の作風と大きく異なる点は賛否が分かれるのかなとも思いました。特に終盤のキワさんが妖怪に立ち向かって行くシーンは映画全体の作風とマッチしていないように感じてしまい違和感が強く出てしまいました。

しかし、総合的に評価すると学べることも多くそれでいて楽しむことのできる児童文学原作の作品として非常に高い完成度の作品だと感じました。特にユイとひよりの成長していく姿は必見だと思います。

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