映画『カラダ探し』レビュー
”原作の魅力を失った青春ホラー映画”
監督は「海猿」「暗殺教室」の羽住英一郎。
キャストは橋本環奈、山本舞香、神尾楓珠、醍醐虎汰朗、横田真悠などとなっています。
まず監督が暗殺教室の人ということで嫌な予感がしていましたが、見事にその嫌な予感が的中したというのが率直な感想です。
原作の面白い部分が削ぎ落され、終盤の展開のために長尺で青春ドラマを見せられる意味不明な映画でした。
ネタバレは多少ありますので一応ネタバレ注意でお願いします。
それでは映画『カラダ探し』レビューをしていきたいと思います。
作品紹介・あらすじ
作品紹介・あらすじ
小説投稿サイト「エブリスタ」で話題を集めた携帯小説で、2014年には漫画化もされた人気作品「カラダ探し」を、橋本環奈の主演で映画化。無残に殺される日を何度も繰り返すことになる高校生たちの恐怖を描いた。
7月5日、女子高生の森崎明日香は、校内でいるはずのない幼い少女と出会い、「私のカラダ、探して」という不気味な言葉をかけられる。不思議な出来事に違和感を覚えつつも、いつも通りの一日を終えようとしていた明日香。しかし、午前0時を迎えた瞬間、気が付くと彼女は深夜の学校にいた。そこには明日香の幼なじみで最近は疎遠になっていた高広と、普段は接点のないクラスメイト4人も一緒にいた。困惑する6人の前に、全身が血で染まった少女「赤い人」が現れ、6人を次々と惨殺していく。すると明日香は自室のベッドで目を覚まし、7月5日の朝に戻っていた。その日から6人は同じ日を繰り返すことになり、そのループを抜け出す唯一の方法は、とある少女のバラバラにされたカラダをすべて見つけ出すことだった。
主人公の明日香を橋本、幼なじみの高広を眞栄田郷敦が演じるほか、山本舞香、神尾楓珠、醍醐虎汰朗、横田真悠ら注目の若手キャストが集結。「海猿」「暗殺教室」など多数のヒット作を手がけてきた羽住英一郎監督がメガホンをとった。2022年製作/102分/PG12/日本
カラダ探し : 作品情報 – 映画.com (eiga.com)
配給:ワーナー・ブラザース映画
感想
本作は、原作から改変されている要素が多々あり、改変された部分が映画にとってプラスに働いているところもあればマイナスに働いているところもあります。
例えば、赤い人に殺されるルールとして赤い人を見た後に振り返る。赤い人に捕まり歌を歌い終わると殺されるといったルールがありますが、本作では赤い人に見つかったら殺されるといった単純なルールに変更されています。
映画の上映時間は限られている訳ですから原作の設定を全て盛り込んで生かしきれずに持て余すくらいなら、ルールをシンプルにして尺の中で描ききれるようにしたのは良い判断だと思いました。
序盤で原作と同じように風呂敷を広げたとしても映画の尺では畳むことは難しいためある程度の取捨選択は必要であるため、原作ファンからしたら賛否が巻き起こるのは避けられないとは思いますが、この選択は間違ってなかったと思います。
しかし、改変したところで評価できるポイントはこのくらいでその他の改変ポイントは酷いものでした。まずキャラクターですが原作の登場人物をそのまま実写として出している訳ですが中身はほとんど別人で、このよううなキャラ改変は納得のできる十分な理由があれば良いのですが本作では全く改変した意味のないものになっています。
またストーリーの展開にも難があり中盤以降は青春映画といった側面が強く出てしまっており原作のイメージと大きく異なってしまっています。原作では自分が生きるために他人を利用したり追い詰められた時の人間の汚い部分にも焦点が当てられ描かれていましたが、この映画ではすぐに友情が芽生えて団結するため、いくらなんでも絆の描き方が雑すぎると感じました。
一応青春シーンを長尺で撮ったのも終盤のカラダ探しをクリアしたら記憶が消える展開から意図は理解できます。仲間との楽しい日々を描くことによって消したくない記憶となって終盤の展開に生かそうとしたのだと思いますが映画を通して絆を上手く描けてないため全く効果がなく、ただ原作のイメージを崩壊させただけといったのが素直な感想です。
総評
本作の映画の上映時間を考慮して原作からの取捨選択をするといった考え方は理解できますが、それが成功したとは言い難いです。ストーリーの展開だったり、キャラクターの性格だったり変えてはいけないところまで改変してしまっておりそれが悪い方向に働いてしまったなといった印象です。
赤い人に関する謎解き部分もないですし、原作で活躍していたキャラクターの活躍シーンは大幅カットされており、何のために改変したのか分からない変更までされています。
おそらく終盤の記憶が消される展開のために青春シーンに多く尺を使ってしまったため、尺が足りなくなったのだと思いますが、それにしても尺の使い方が下手糞だなといったのが率直な感想です。
ある程度、何をしたいのか理解ができるだけに制作陣の能力が全く足りていないためにこのような残念な映画となってしまったのだと思います。
何だか、続編を匂わす要素をエンドクレジット後に入れていますが、製作スタッフが同じであれば、クオリティは程度が知れてるので橋本環奈を初めキャスト目当てでなければ見る価値のない映画だと感じました。