映画『しん次元! クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』レビュー
”クレヨンしんちゃんの本質的な魅力を理解せずに制作した残念な映画”
監督と脚本は大根仁。
クレヨンしんちゃんの映画では初の3DCGの作品ということと前作、前々作の映画のクオリティが高かったことから期待していました。
しかし、大根仁監督の手腕ではクレヨンしんちゃんという作品の魅力を全く引き出せておらず、実力のない監督が手掛けるとクレしん映画でもここまで駄作になるのだと改めて教えてもらいました。
多少のネタバレはありとなっていますのでネタバレ注意でお願いします。
それでは映画『しん次元! クレヨンしんちゃん THE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』レビューをしていきたいと思います。
作品紹介・あらすじ
作品紹介
シリーズ初の3DCG化!
『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』公式サイト (shinchan-movie.com)
制作期間7年の時を経て、笑いも、感動も、家族愛も、
何もかもが超スペクタクルな“しんちゃん”が誕生!
アニメーションを担当するのは『シン・ゴジラ』や
『STAND BY ME ドラえもん』を手がけてきた、
CGプロフェッショナル集団の白組。
さらに、『モテキ』(2011)、『バクマン。』(2015)の
大根仁が『クレヨンしんちゃん』で
初のアニメーション監督を務める。
この夏しか会えないモッチモチしんちゃんが、
エスパーになって、手巻き寿司を飛ばして、
世界をおたすけ!?
こんなしんちゃん、見たことない──。
あらすじ
ノストラダムスの隣町に住むヌスットラダマスはある予言を残していた。
「20と23が並ぶ年に天から二つの光が降るであろう。一つは暗黒の光、もう一つは小さな白い光…やがて暗黒の光は強大な力を持ち、平和をごっつ乱し、世界にめっちゃ混乱を招くことになるんやでえ」
そして2023年、宇宙から二つの光が接近。夕飯を待ちわびるしんのすけに白い光が命中する。体にみなぎる不思議なパワー。「お尻が…お尻がアツいゾ…」力を込めるとおもちゃがフワフワと宙に浮いた!エスパーしんのすけ誕生の瞬間である。
一方、黒い光を浴び、暗黒のエスパーとなった男の名は非理谷 充。バイトは上手くいかず、推しのアイドルは結婚、さらには暴行犯に間違われ警察に追われていた彼は、力を手に入れたことでこの世界への復讐を誓う。
世界の破滅を望む非理谷 VS しんのすけ。
『しん次元!クレヨンしんちゃんTHE MOVIE 超能力大決戦 〜とべとべ手巻き寿司〜』公式サイト (shinchan-movie.com)
“すべてが、しん次元”なちょー超能力大決戦が今、幕を開ける!
この夏、絶望に立ち向かうしんのすけの放つ光に、胸と尻がアツくなる──
感想
クレヨンしんちゃんの映画では初の3DCGの作品ということもあり、前作と前々作の完成度も高かったため期待も大きかった作品ですが大根仁の脚本が全てを台無しにした映画だと感じました。
クレヨンしんちゃんという作品の上辺だけの要素を取り入れただけで、一本の作品としてみても褒められたものではありません。クレしんはデフォルメされた絵でアニメとして動かしやすい作品でもありますが、最初からキャラクターを動かしやすくアニメ映えしやすい作品をCGで動かす利点が全く感じられませんでした。
とりあえずCGでキャラクターを動かすことだけを重点としており止まっている状況でもキャラクターが揺れており、そのような動きに必要性が感じられません。激しいアクションの求められる場面と動きの求められていない場面とのメリハリが重要で、闇雲にキャラクターを動かせば良いというわけではありません。
またキャラクターの設定も微妙で、オタクで人生が上手くいっていないキャラクターが本作のヴィランで、その非リア充を捩ったキャラクターを元気づけることで事態を解決しようとする展開は、焦点がズレているように感じます。
まず設定からですが、オタク⁼非リア充という設定ですがオタクに対してのイメージが昔からアップデートが全くされてなく、監督がもつオタクに対する価値観が悪い意味で作品に反映されてしまっていると感じます。
ストーリーにおいては終盤の展開でしんちゃんが充の記憶に入り、過去の充を救う展開になるのですが、5歳児の言葉とひろしの靴下の臭いで救われる道を踏み外した社会人がいるわけありません。
大人帝国でのパロディなのかもしれませんが、大根仁監督は大人帝国の映画の本質的な意味を全く理解していないのが本作を観て明確になりました。あの作品でケンとチャコがしんちゃんの言葉に心を動かされた意味、ひろしが過去に囚われてしまった状態から自身の靴下の臭いを嗅ぎ正気に戻った理由を理解してからクレヨンしんちゃんという作品に向き合ってもらいたかったです。
総評
本作は3DCGという利点が全く生かされていないどころか、クレヨンしんちゃんという作品の魅力も全く生かされていない作品でした。
何故クレヨンしんちゃんの映画が子供から大人まで楽しめる作品だったのか、本質的な魅力を全く監督が理解されていないため設定を上辺だけ掬った本作のような作品し仕上がってしまったのだと感じました。
3DCGという話題性だけで興行収入だけを狙いに来たのが良く分かります。非リア充のイメージがオタクで5歳児の言葉で改心する社会人、何故かひろしの靴下の臭いで元気づけていく展開全てが最悪でした。
この映画を観ることを迷っているのであれば、間違いなく『クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』などの過去の映画を観ることをオススメします。