映画『ピノキオ』レビュー
”アニメ版のメッセージ性を台無しにした駄作”
児童文学としての子供たちに作品を通して、様々な学びを得ることのできるディズニーの名作「ピノキオ」の実写ですが、現代に実写としてリメイクするにあたって様々な改変を行っています。
しかし、改変した要素が全て裏目に出てしまい、アニメ版で伝えたいことがまるで伝わらない映画となってしまいました。
それでは、映画「ピノキオ(実写版)」のレビューをしていきたいと思います。ストーリーには軽く触れますがネタバレはなしでレビューします。
作品紹介・あらすじ
名作ディズニーアニメ「ピノキオ」を、「フォレスト・ガンプ 一期一会」などでタッグを組んできたロバート・ゼメキス監督と主演トム・ハンクスのコンビにより実写化。
風変りなおじいさんのゼペットは、ひとり孤独に暮らしていた。ある晩、ゼペットが作った木彫りの人形ピノキオに、妖精ブルー・フェアリーが魔法をかけたことで命が宿る。本物の人間の子どもになりたいと願うピノキオは、コオロギのジミニー・クリケットに導かれながら成長していくが、純真無垢であるがゆえに、さまざまな誘惑や試練に直面する。そんなピノキオが、ゼペットの子どもになりたいという願いをかなえるため、困難が待ち受ける冒険の旅に出る。
トム・ハンクスがゼペットを演じ、妖精ブルー・フェアリー役に「ハリエット」のシンシア・エリボ、悪役のコーチマンに「美女と野獣」のルーク・エバンス。1940年のアニメ版の主題歌でもあり、すべてのディズニー映画のオープニングにも起用されていることから、誰もが一度は耳にしたことのある名曲「星に願いを(When You Wish Upon a Star)」も再び映画を彩る。Disney+で2022年9月8日から配信。2022年製作/111分/アメリカ
ピノキオ : 作品情報 – 映画.com (eiga.com)
原題:Pinocchio
配信:Disney+
感想(不満点)
まず映像ですが、ピノキオのデザインが周りの実写の映像にマッチしておらず、本物の中に偽物が混じると一人だけ浮いて見えてしまいます。
ストーリーに関しても学校にピノキオは一度も行かずに甘い誘いに乗ってしまう流れを改変し、学校から追い出されたピノキオが狐の甘い誘いに乗ってしまう流れに変更されてしまっています。
学校に行かずに甘い誘いに乗って痛い目を見るといったピノキオの失態から、学べる要素があったアニメ版ピノキオから、一度学校に行こうとしたピノキオを学校側が追い出してしまったらアニメ版のメッセージ性が損なわれてしまいます。
また、ピノキオは嘘をつくと鼻が伸びてしまうというのは有名な話ですが、アニメ版では鼻が伸びるといった描写は、いわゆる”お仕置き”のような形で描かれていましたが、実写版では嘘をついて鼻が伸びたことで事態が好転する描写もあり、これでは嘘をついたらいけないといったアニメ版のメッセージ性が台無しになってしまうと思います。
また、最近のディズニー映画でありがちなポリコレ要素もひどいです。一番顕著なのは妖精のブルー・フェアリーに黒人を起用したことで、明らかにアニメ版のブルー・フェアリーのイメージにあっていないと感じました。
黒人の起用を否定しているのではなく、キャラクターのイメージにそぐわないキャスティングには反対です。作品にはそれぞれキャラクターのイメージがあり、そのイメージと大きくかけ離れるキャスティングは、アニメ版の制作陣にも、ピノキオという作品に思い入れがある人にも誰にとっても幸せにはなれないと感じます。
総評
ディズニープラスで鑑賞でき、上映時間も短いため気軽に見れる作品であるため、作品自体の完成度が高ければ紹介しようと思ったのですが、作品自体のクオリティが天下のディズニー作品とは思えないほど低く手放しにお勧めできないのが悲しいです。
ピノキオのCGも全く自然ではなく、一人だけ浮いてしまっているのも残念です。
アニメ版にあったメッセージ性が改悪によって台無しになっており、ストーリーの大筋こそ同じものの小さな変更箇所が全て裏目に出てしまったように感じました。
また、ポリコレ要素も酷くキャラクターのイメージよりもポリコレ要素を取り入れる方を優先するディズニーの姿勢には落胆させられました。
時折入るディズニーキャラクターのファンサービスも尺を不自然に使っており、もっとさり気ない演出にした方が良いと感じました。
ピノキオという作品のストーリーを知りたければ間違いなくアニメ版を推奨します。実写版はアニメ版のストーリーをとりあえずなぞっただけの駄作だというのが最終的な感想です。