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映画『聲の形』レビュー

レッド

”監督「山田尚子」、脚本「吉田玲子」の最強タッグ

と「けいおん!」で社会現象を巻き起こした最強タッグ。そしてアニメーション制作会社は京都アニメーションと期待せずにはいられない作品ですが、実際に鑑賞してみると期待のさらに上をいく非常に高い完成度の映画となっています。

2016年公開の映画では「君の名は。」が社会現象を巻き起こした年でしたが、本作も「君の名は。」と同様かそれ以上の傑作だと思います。

キャラクターの心理描写を徹底的に丁寧に描き、自分の犯してしまった罪の重さと傷つけてしまった相手と向き合い成長していく石田将也の物語。

それと同時に障害のある自分自身と向き合い自我を確立していく西宮硝子の物語は、人生で一度で良いから見てほしいです。

物語の結末などのネタバレは控えますが、多少のネタバレは含みますのでネタバレ注意でお願いします。

それでは映画『聲の形』のレビューをしていきたいと思います。

作品紹介・あらすじ

作品紹介

「週刊少年マガジン」に連載され、「このマンガがすごい!」や「マンガ大賞」などで高い評価を受けた大今良時の漫画「聲の形」を、「けいおん!」「たまこラブストーリー」などで知られる京都アニメーションと山田尚子監督によりアニメーション映画化。

脚本を「たまこラブストーリー」や「ガールズ&パンツァー」を手がけた吉田玲子が担当した。

退屈することを何よりも嫌うガキ大将の少年・石田将也は、転校生の少女・西宮硝子へ好奇心を抱き、硝子の存在のおかげで退屈な日々から解放される。

しかし、硝子との間に起こったある出来事をきっかけに、将也は周囲から孤立してしまう。

それから5年。心を閉ざして生き、高校生になった将也は、いまは別の学校へ通う硝子のもとを訪れる。

2016年製作/上映時間129分/G/日本
配給:松竹

映画 聲の形 : 作品情報 – 映画.com (eiga.com)

評価点

  • 「いじめ」と「障害」重いテーマを誠実に描写している。
  • 石田将也と西宮硝子の成長を丁寧に描いている
  • 川井、大垣、植野、島田など嫌われてる理由も納得な登場人物

「いじめ」と「障害」重いテーマを誠実に描写している。

本作で最も素晴らしいと感じたことが、「いじめ」と「障害」という重いテーマを扱っていながらも徹底して過去に罪を犯してしまった自分自身、傷つけてしまった相手とどのように向き合っていかなければならないのかを巧みに描ききっているところだと思います。

石田将也は子供の好奇心から、障害のある西宮硝子をいじめてしまいます。大人になってから考えると子供の頃にどうしてそんなことができたのだろうと考えること、何であんなことをしてしまったのだろうと考えてしまうことが一つや二つは皆あると思いますが、その犯してしまった後悔が他人を傷つけてしまう「いじめ」という行為であった場合、後悔の重さは計り知れません。

「いじめ」とは相手の人生を滅茶苦茶にしてしまう許されざる行いであり、傷つけてしまった相手に償いきれない最低なことです。

過去の自分を責めても許されることではありませんが、本作では「いじめ」という行為の罪の重さを描くと同時に、「いじめ」の被害に遭わせてしまった西宮硝子と「いじめ」をしてしまった将也が過去の自分と向き合う心理描写を見事に作品に落とし込んでいました。

加害者と、被害者の双方の視点を二人のキャラクターに寄り添いながら完璧に作品に落とし込んできたのは、さすが京都アニメーション、さすが山田尚子監督と吉田玲子脚本の最強タッグだなと感じました。

石田将也と西宮硝子の成長を丁寧に描いている

「いじめ」をしてしまった過去から他者との関わりを断ってきたきた石田将也一度は自殺も考えるわけですが、将也も自殺という選択をやめ、「いじめ」の被害者にしてしまった硝子と向き合う決断をするわけですが、将也が過去の自分と向き合う最初の一歩として適切だと感じました。

過去の過ちの償い方として命を絶つことは何の償いにもなりません。そのため被害者に誠心誠意謝罪する行動は「いじめ」をしてしまった将也の行動としては共感出来ました。当然、被害者である硝子が顔も見たくないと思うのなら会うことは控えた方が良いですが。

硝子の成長の物語としても非常に丁寧に描写されており、最初は「障害」のある自分に劣等感のような感情を抱いていました。また、持ち前の優しい性格からあのような行動をとってしまうのですが、そこからの硝子は自分自身の課題と向き合い行動していきます。

ストーリーを通して硝子が他人とのコミュニケーションでの失敗経験から自分の気持ちを表現することに対して臆病になってしまうのも理解できるし、そこから一歩踏み出して行く硝子には応援したいという気持ちが自然と生まれてきました。

また、コミュニケーションをとることに臆病になってしまったのは将也も同じで、心を閉ざしてしまった将也が最後に心理的に救われる場面があります。

その時の演出がこの映画特有の表現で、序盤から周囲の人の顔にバツ印が付く描写がありますが、この演出が生きてくる場面がラストにあるので実際に見てもらいたいです。

川井、植野、島田など嫌われてる理由も納得な登場人物

将也と硝子以外の登場人物に良心的なキャラクターが少なく、「いじめ」を行っているにも関わらず「いじめ」をしていたという自覚すら皆無の川井みき。

「いじめ」が発覚した後に将也を裏切り、将也を「いじめ」の対象として将也が孤立するきっかけを作った島田一旗。

将也が会いたくない人物の一人である島田に再会させてみたり、「いじめ」に加担したと思われたくなく将也を売って責任逃れをした植野 直花。

将也と硝子を取り巻くサブキャラクター達も相当悪い行いをしているのにも関わらず特に反省している描写もなく、胸糞悪い要素が少なからず存在してしまっているのが、本作において賛否分かれてしまう一番の要因だと思います。

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総評

総合的な評価としては、「いじめ」「障害」といったデリケートなテーマにも関わらず誠実に描ききった傑作だと感じました。

将也と硝子の二人が自分自身の置かれている現実と向き合い成長していく姿には感動させられましたし、考えさせられました。

過去の取り返しのつかないことをしてしまった将也と、他人とコミュニケーションをとることに臆病になってしまった硝子が一歩踏み出す描写はさすが京都アニメーションであり、山田尚子監督と吉田玲子脚本だと感じました。

キャラクターの描写がリアルであるのが利点ではあるのですが、将也と硝子の周囲の登場人物に胸糞悪い気持ちにさせられる点が難点ではありますが総合的には素晴らしい作品だと自信をもって勧められます。

アニメーション、ストーリー、音楽どれをとっても最高クオリティの映画なので人生で一度は見るべき映画です。

現在では、札幌の中1の女子生徒がいじめを受けて飛び降り自殺をしてしまう問題などもありましたが、いじめを受けて命を絶ってしまう問題は現実でも起きてしまっています。

本作は、加害者側が「いじめ」というものの罪の重さを認識するためにも、「いじめ」というものが人の命を奪う残虐な行為であることを再認識するためにも、現在多くの人に見てもらいたい映画です。

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