映画『漁港の肉子ちゃん』レビュー
”日本アカデミー賞は過大評価”
監督は「海獣の子供」が高い評価を受けた渡辺歩監督。アニメーション会社はSTUDIO4℃。
声優としては大竹しのぶ、木村拓哉と工藤静香の長女でモデルのCocomi、「鬼滅の刃」の花江夏樹など話題性のあるキャスティングとなっています。
日本アカデミー賞にもノミネートされた作品ではありますが、ストーリーとキャラクターの描写から評価するとそこまで評価される作品ではないと感じました。
ネタバレは多少ありますのでネタバレ注意でお願いします。
それでは映画『漁港の肉子ちゃん』レビューしていきたいと思います。
作品紹介・あらすじ
作品紹介
明石家さんまの企画・プロデュースで、直木賞作家・西加奈子の同名ベストセラー小説をアニメ映画化。漁港で暮らす食いしん坊で脳天気な肉子ちゃんは、情に厚くて惚れっぽく、すぐ男に騙されてしまう。
しっかり者でクールな11歳の娘キクコは、そんな母のことが少し恥ずかしい。やがて母娘の秘密が明らかになり、2人に最高の奇跡が訪れる。
底抜けに明るくパワフルな主人公・肉子ちゃんの声を大竹しのぶが担当。木村拓哉と工藤静香の長女でモデルのCocomiがキクコ役で声優に初挑戦し、「鬼滅の刃」の花江夏樹らが共演する。
「海獣の子供」が高い評価を受けた渡辺歩監督とSTUDIO4℃が手がけ、スタジオジブリ出身の小西賢一がキャラクターデザイン・総作画監督、「サヨナラまでの30分」の大島里美が脚本を担当。
2021年製作/97分/G/日本
漁港の肉子ちゃん : 作品情報 – 映画.com (eiga.com)
配給:アスミック・エース
感想
本作の見所はSTUDIO4℃のアニメーションだと感じました。裏を返せばSTUDIO4℃のアニメーションがなければ特に観ることを推奨する映画でもないなといった感想です。
この映画における一番の不満点はなんといってもきくりんの本当の母親の存在だと思います。きくりんの実の母親は知らないところで知らない男との間に子供を授かっています。特に育てられない理由もなく肉子ちゃんにきくりんを預けて育児放棄。
こんな母親のエピソードを感動エピソードのように語られても全く感動できません。きくりんは実の母親に捨てられたことで「自分は望まれて生まれてきた子供ではない」と思い込んでしまっています。そんな彼女を見て大人は「お前は望まれて生まれてきた」といっているシーンを見せられても観てるこっちからしたら素直に喜ぶことはできません。
実際きくりんは実の母親に捨てられていますし、その言い訳みたいな感じできくりんを気にかけている描写も申し訳程度に描いてはいますが、実の子供と一緒に幸せな生活を送っていて、きくりんを育児放棄して肉子ちゃんに預けたという事実は変わりません。
それなのに、望まれて生まれなかった子供はいないというメッセージ性を伝えてきても説得力が皆無だと思います。なんか若さが原因で仕方がないことのようなセリフが入りますが、そんなの子供には関係のないことですし、若いということは育児放棄の理由にはならないと思います。
総評
「誰もが望まれて生まれてきている」というのを作品を通して言いたいのは分かりますが、実際のキャラクターが犯していることを考えると全く持って共感できませんでした。子供を育てられない理由を若さのせいにするのはやめてほしかったです。
STUDIO4℃のアニメーションがなければ観る価値はほとんどない作品だと思います。育てることができなくなった真っ当な理由などがあればまだ納得できますが、そんな理由はありません。
理由もなく育児放棄する母親をフォローする肉子ちゃんのセリフも終始心に響きませんし、無理やり魅力的なキャラクターにもっていこうとするのは本当にセンスがないと感じました。
明石家さんまがプロデュース、木村拓哉の娘のCocomiが声優挑戦など話題性があったことで、評価として日本アカデミー賞にもノミネートされたみたいですが、ストーリーとキャラクターの描写という観点から評価すると過大評価されすぎだと感じました。