映画『渇水』レビュー
”岩切に共感できるかで評価が分かれる”
監督は、岩井俊二監督作や宮藤官九郎監督作で助監督を務めてきた高橋正弥。脚本は及川章太郎
キャストは生田斗真、門脇麦、磯村勇斗、宮藤官九郎、柴田理恵などとなっています。
子供は親を選べない、またそんなことは言い訳にすらさせてもらえない世の中を描いていますが、主人公である岩切の行動に共感できるかが評価の分かれるポイントだと思います。
個人的な感想としましては、問題提起までは良くできているのですが、その回答としては残念な結果となってしまった印象です。
映画『渇水』レビューをしていきたいと思います。
作品紹介・あらすじ
凶悪」「孤狼の血」などを送り出してきた白石和彌監督が初プロデュースを手がけ、生田斗真を主演に迎えて送る人間ドラマ。作家・河林満の名編「渇水」を原作に、心の渇きにもがく水道局職員の男が幼い姉妹との交流を通して生きる希望を取り戻していく姿を描く。
市の水道局に勤める岩切俊作は、水道料金を滞納している家庭や店舗を回り、料金徴収および水道を停止する「停水執行」の業務に就いていた。日照り続きの夏、市内に給水制限が発令される中、貧しい家庭を訪問しては忌み嫌われる日々を送る俊作。妻子との別居生活も長く続き、心の渇きは強くなるばかりだった。そんな折、業務中に育児放棄を受けている幼い姉妹と出会った彼は、その姉妹を自分の子どもと重ね合わせ、救いの手を差し伸べる。
監督は、岩井俊二監督作や宮藤官九郎監督作で助監督を務めてきた高橋正弥。2023年製作/上映時間100分/PG12/日本
渇水 : 作品情報 – 映画.com (eiga.com)
評価点・不満点
貧困な家庭を中心としたストーリーで、母親は働いてはいるが貧しい暮らしを強いられておりやがて両親に見捨てられた姉妹。
小さな女の子に水道代を支払えるだけの経済力はないため、やがて停水を余儀なくされてしまいます。予告編を見た段階だと問題提起としては非常に面白いテーマをもってきた映画だなといった印象でした。
子供は親を選ぶことはできません。どんなに最低な両親でも現実を受け入れて生きるしかない子供の目線と、そんな状況下にいる女の子を目の当たりにして岩切がどのような決断をするのか興味がありました。
上映時間も100分と見やすいため、結末しだいでは高い評価のつけられる作品になるのかなと思ったのですが、結末を見て評価に値しない映画となってしまったなといった感想です。
確かに、子供に罪はなく最悪な親の被害者であることは間違いありません。しかし水道代が支払えないのであれば停水というのは仕方がないことで、可哀そうという理由で女の子二人を特別扱いしてしまうと、水道代を払っている家庭にとっては不平等と感じてしまうのは自然な流れであり規則として成り立ちません。
この難しい問題に対して、この映画でのラストはどうなるのかと思って見たのですが案の定共感の全くできない結末となってしまいました。
具体的にはネタバレになってしまうので語れませんが、岩切の行動が理解不能で「どんな映画だよ」って心の中で叫んでしまいました。
総評
テーマ性においては評価できるのですが、この映画の出した答えに問題がある映画だなといった感想です。水道代を支払わず水を利用することさえままならない、それは子供たちは被害者であり父親や母親の問題であることは間違いありません。
自分の力でお金を稼ぐことさえさせてもらえない、女の子に罪はないのは当然ですが、だからといってラストの岩切の行動には一つも共感することができませんでした。
キャストも生田斗真、門脇麦、磯村勇斗、宮藤官九郎、柴田理恵と豪華であるにも関わらず、興行収入が伸び悩んでいるのも仕方がないなと思います。
難しい難題であることは承知していますが、もう少し映画で題材としたテーマに納得のいく回答を見せてほしかったなというのが率直な感想です。