映画『メアリと魔女の花』レビュー
”スタジオジブリ作品の切り取り集”
監督は「借りぐらしのアリエッティ」「思い出のマーニー」の米林宏昌。
映画の大半の時間がマンホールの中という挑戦的な作品ではありますが、SNSの描き方を良い所だけでなく、使い方を間違えれば恐ろしいものにもなるところを上手く描けていたため、見る前よりも評価している映画です。
ストーリーのネタバレは基本していませんが、少しストーリーにふれた感想を書いているためその点は注意してください。
それでは映画『メアリと魔女の花』のレビューをしていきたいと思います。
作品紹介・あらすじ
作品紹介・あらすじ
「借りぐらしのアリエッティ」「思い出のマーニー」の米林宏昌監督がスタジオジブリ退社後に初めて手がけた作品で、同じくジブリ出身の西村義明プロデューサーが設立したスタジオポノックの長編第1作となるファンタジーアニメ。
イギリス人作家メアリー・スチュアートの児童文学「The Little Broomstick」を原作に、魔女の花を見つけたことから魔法世界に迷い込んだ少女メアリの冒険を描く。
田舎町の赤い館村に引っ越してきた11歳の少女メアリは、7年に1度しか咲かない不思議な花「夜間飛行」を森の中で発見する。それは、かつて魔女の国から盗み出された禁断の花だった。一夜限りの不思議な力を手に入れたメアリは、魔法世界の最高学府・エンドア大学への入学を許されるが、メアリがついたある嘘が大きな事件を引き起こしてしまう。
声優は、NHK連続テレビ小説「とと姉ちゃん」や映画「湯を沸かすほど熱い愛」で注目される杉咲花がメアリ役で主演を務めたほか、メアリによって事件に巻き込まれてしまう少年ピーター役で、「借りぐらしのアリエッティ」でも米林監督と組んだ神木隆之介が出演。そのほか、エンドア大学の校長役を天海祐希、魔女の国から禁断の花を盗んだ赤毛の魔女役を満島ひかり、メアリの大叔母役を大竹しのぶがそれぞれ演じる。
2017年製作/102分/G/日本
メアリと魔女の花 : 作品情報 – 映画.com (eiga.com)
配給:東宝
劇場公開日:2017年7月8日
感想
本作の一番の感想としてはスタジオジブリの見たことのあるシーンの寄せ集めと言った感想で、全てがスタジオジブリの既視感に満ちた作品となっています。
このスタジオジブリから受け継いだものが精神的なものであれば評価できる作品になったの思うのですが、継承されているのがスタジオジブリの表面的な部分だけなので見た目はスタジオジブリで中身は全くの別物という残念な映画となってしまっています。
おそらく、予備知識がない状態で本作を見るとスタジオジブリに似てると感じたり、パクリと感じてしまう人も多いはずです。キービジュアルから考えても制作陣もスタジオジブリ風を前面に押し出して興行収入を良くしようとしてるのが予想できます。
ストーリーに関しても目新しいものはなく、物語の冒頭は完全に天空の城ラピュタを意識しており、魔女の花という花が物語の中で重要な役割を担っているわけですが、この花を巡って面白い展開があるわけでもなく予想を越えるような展開は全くありませんでした。
また、メアリが魔法学校に行く動機づけが弱く魔法の花の力を使い、使ってる間だけ魔女になる。そのまま成り行きでハリーポッターのホグワーツのような魔法学校に入り、魔法学校の闇を知る。最後は魔法を否定するが魔法の力で帰宅。
登場人物にも魅力がなく主人公であるメアリも自分の感情を独り言としてセリフで話すので何を考えているのか分かります。しかし、映像やキャラクターの表情からメアリが何を考えているのか考察する必要もないですし、必要以上に感情をセリフで伝えてくるため、キャラクターとしてつまらないと感じてしまうところもありました。
子供にも楽しめる作品を目指しているために、説明セリフが多くなるのは分かりますが、説明セリフを増やせば増やすほど話のテンポが悪くなりますし、そもそもスタジオジブリがセリフではなく映像で伝える手法で成功してるんだから、そこを受け継げば良かったのになと思ってしまいました。
ピーターは一言で言ってしまうとうざいキャラクターでした。影が薄く後半に従って急にストーリーに絡んできますが、ピーターというキャラクター性を全く描けていないため、救出する展開に全く熱くなれません。
ここまで悪い部分ばかり言ってしまいましたが、良かった点ももちろんあります。アニメーションと主題歌です。アニメーションはスタジオジブリでの経験が活かされており、映像の素晴らしさは文句なしです。作画や動きなど素直に評価できます。
また主題歌もSEKAI NO OWARIの『RAIN』は心に残る素晴らしい曲だと思います。
まとめると、本作がジブリじゃない別物をスタジオジブリの表面的な部分だけ詰め込んで作られた作品といった感想です。ひどい映画とは思いませんが、予備知識なしで見たらパクリと感じてしまっても不思議ではないくらい意識して作られています。
アニメーションと音楽以外は評価できる要素はないため、本作を見るならスタジオジブリ作品を見た方がみんな幸せになれると思います。次作の『屋根裏のラジャー』が興行収入的に大コケしたのも本作を見ると必然だったのかもしれません。
サブスクなどでも見れるため興味のある人は一度見るのも良いかもしれません。