映画評価

映画『アイの歌声を聴かせて』レビュー

レッド

“泣ける”映画のクオリティに……

監督は「イヴの時間」、『サカサマのパテマ』などの吉浦康裕。

土屋太鳳や福原遥もアテレコに参加し、口コミでは高評価、興行収入としては爆死とまではいかないにしても苦戦しているようです。

2021年のアニメ映画では『映画大好きポンポさん』であったり『ラーヤと龍の王国』などの興行収入は振るわなかったが作品自体のクオリティは素晴らしい映画がありました。

もし、この映画も名作であるのなら埋もれさせるのはもったいないと思い鑑賞しましたが、口コミで絶賛されるような映画ではないなといった感想です。

映画『アイの歌声を聴かせて』レビューをしていきたいと思います。

ネタバレは序盤と中盤の展開について多少しますが、ラストの展開や結末についてのネタバレはなしでレビューしていきます。

作品紹介・あらすじ

作品紹介

ポンコツ“AI”とクラスメイトが織りなす、爽やかな友情と絆に包まれたエンターテインメントフィルムが誕生!

監督は「イヴの時間」、『サカサマのパテマ』などで海外からも注目を集め、アニメーションの新たな可能性を切り拓いている吉浦康裕。自身が得意とする「AI」と「人間」の関係というテーマを、高校生の少年少女たちが織りなす瑞々しい群像劇という形で描写し、圧倒的なエンターテインメントフィルムとして仕上げている。
キャラクター原案には、気鋭の漫画家・紀伊カンナ、共同脚本には、『コードギアス』シリーズや「SK∞ エスケーエイト」の大河内一楼が参加。また、劇伴・劇中歌は「SK∞ エスケーエイト」の高橋諒、「プリパラ」「ドリフェス」の松井洋平が作詞を担当。

ちょっぴりポンコツなAIの主人公・シオンを土屋太鳳が演じ、多彩な楽曲たちをエモーショナルに歌い上げる。もうひとりのヒロインであるサトミを福原遥、幼馴染のトウマを工藤阿須加が演じ、小松未可子、興津和幸、日野聡といった実力派声優も集結!

イントロダクション&ストーリー|映画『アイの歌声を聴かせて』公式サイト (ainouta.jp)

あらすじ

景部高等学校に転入してきた謎の美少女、シオン(cv土屋太鳳)は抜群の運動神経と天真爛漫な性格で学校の人気者になるが…実は試験中の【AI】だった!
シオンはクラスでいつもひとりぼっちのサトミ(cv福原遥)の前で突然歌い出し、思いもよらない方法でサトミの“幸せ”を叶えようとする。

彼女がAIであることを知ってしまったサトミと、幼馴染で機械マニアのトウマ(cv工藤阿須加)、人気NO.1イケメンのゴッちゃん(cv興津和幸)、気の強いアヤ(cv小松未可子)、柔道部員のサンダー(cv日野聡)たちは、シオンに振り回されながらも、ひたむきな姿とその歌声に心動かされていく。

しかしシオンがサトミのためにとったある行動をきっかけに、大騒動に巻き込まれてしまう――。

ちょっぴりポンコツなAIとクラスメイトが織りなす、ハートフルエンターテイメント!

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感想(評価)

  • 設定に無理がある
  • シオンの歌の力で物事が好転し過ぎ
  • ストーリー構成は微妙、福原遥の演技は素晴らしい

設定に無理がある

AIの法律に違反しているにも関わらず、AIであることが周りにバレなければ大丈夫という判断で学校に生徒としてシオンを送り込むのですが、シオンが何故AIであることを隠しながら学校生活を送れると判断したのか理解できませんでした。

シオンには強制停止システムというシステムがあり、内部のパーツが外部に飛び出すといった仕様があり、この強制停止システムが頻繁に作動しストーリー序盤では生徒たちの前でAIであることを晒してしまっています。

また、急にサトミの前で歌いだしたり、人間らしからぬ行動をとって学校中をパニックにさせてみたり、大企業がこんな欠陥だらけの状態のシオンを法律違反であることを承知して学校に送り込むでしょうか、リスクがありすぎるとは思わないのでしょうか。

クラスで一人ぼっちのサトミがシオンというAIに出会うことで人生に転機を迎える、そして人間とAIの間の関係を描きたかったのは理解できます。

しかし、あまりにも設定に無理がありすぎるため世界観に溶け込めず、登場人物全員が頭が悪く見えてしまうのも微妙だと思った要因でした。

シオンの歌の力で物事が好転し過ぎ

唐突に歌いだすシオンの歌の力が凄まじく、シオンの歌にどれほどの効力があるのかは結末を見た後でも一切語られませんが、シオンの歌を聞いくと物事が全て好転しだしキャラクターの思考がポジティブになります。

例としてシオンが歌うと「これまで告白に対して後ろ向きであったキャラクターが勇気づけられて告白する決心を固める」、「他人に自慢出来る人なら誰でも良いんでしょとか言ってた男がシオンの歌を聴いたらお前のこと見くびってたとか言って急に心変わりして告白が見事成功」。「シオンの歌を聴いたらキャラクターが柔道で勝利」。

とりあえず困ったらこいつに歌わせれば良いじゃん。

「マクロス」のように「歌」に重要な役割があるのであれば、ストーリーを通して納得できるだけの説明をするべきだったと思います。

何の力もない歌で物事が好転したり、思考が180度変わったりするキャラクターには怖いとすら感じますし青春映画というよりもホラー映画です。

ストーリー構成は微妙、福原遥の演技は素晴らしい

シオンはサトミ幸せが口癖なのですが、この時点でシオンがどう生まれたのか展開が読めてしまいます。おそらく勘の良い人ならシオンの秘密にしても、最後の展開にしても先読みできてしまうと思います。そして捻りが全くないのでその通りになります。

ストーリー構成自体もひどいです。ガバガバのAI試験からの、シオンの歌の謎パワー披露、そしてラストに向けた良くある「AI」と「人間」の絆の物語と、どこかで見たようなつまらない結末。

しかし、全てが微妙かと言えばしうでもなく、作画と福原遥の演技は本当に素晴らしかったです。脇を固める声優陣に全く違和感なく溶け込めていますし、口コミなどでは土屋太鳳の歌や演技が評価されているみたいですが、この映画では福原遥の演技の方が光っていたと思います。

総評

キャラクターと設定には悪い意味で驚かされました。法律違反でありながらもバレなきゃ犯罪じゃないという思考で、言うことは聞かないし強制停止システム完備、唐突に歌いだすといった何故バレないと思ったのか理解不能な企業の思考。

シオンの歌声を聞くと物事が好転して、告白は成功するし、柔道で勝利。もう全部こいつに歌わせとけば良いじゃんと思うような展開。

伏線も雑で、シオンの口癖が「サトミ幸せ」の時点で、シオンの秘密や結末が大体想像できますし、口コミでは最後泣けるといった意見もありましたが、先読みできるストーリー構成は単純につまらないといった感想です。

しかし、作画と福原遥の演技は素晴らしく声優と同等の演技力とは言えませんが、違和感なく溶け込めているのは流石だなと感じました。

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