映画「最後まで行く」 レビュー
”非人道的な登場人物の結末を見届ける映画”
「新聞記者」、「余命10年」などの監督を務めた藤井道人監督の作品で2023年の今年では「village」も同時期に公開されています。
原作は韓国の映画で藤井道人がどのように日本版としてリメイクしていくのかも気になっていました。また、キャストも岡田准一や綾野剛を起用していることも注目していた一つのポイントでした。
映画「最後まで行く」が実際観てどのような作品だったのか分かりやすくレビューしていこうと思います。物語の核心に触れるネタバレはなしでいきます。
目次
作品紹介・あらすじ
作品紹介
2014年に公開された韓国映画『最後まで行く』。
ひとつの事故を発端に、極限まで追い詰められていく刑事の姿を描いたこのクライムサスペンスは、『パラサイト半地下の家族』のイ・ソンギュンが主演し、韓国で5週連続No1観客動員345万人の大ヒットを記録。第67回カンヌ国際映画祭の監督週間招待作品に選出されました。また、中国、フランス、フィリピンでリメイクされ、フランス版リメイクの『レストレス』は今年2月にNetflixで一斉世界配信され、リメーク国のフランスをはじめ全世界でネットフリックスグローバル映画ランキング1位になり、世界中の映画ファンを熱狂させました。
この度、本作がついに日本でもリメイク。陰謀に巻きこまれていく刑事とそれを追う謎の監察官が織りなす、年の瀬の96時間=4日間の物語が、圧倒的な緊張感とスピード感、そして思わずクスっと笑ってしまうコミカルさをスパイスに展開されていきます。
監督は『新聞記者』で日本アカデミー賞最優秀作品賞を受賞、『余命10年』が興行収入30億の大ヒットと、現在の日本映画界をリードする藤井道人。
主演の刑事・工藤役は、現代劇・時代劇問わず多くの大ヒット作を持つ岡田准一。工藤と対決するエリート監察官・矢崎役は藤井道人作品『ヤクザと家族The Family』「アバランチ」でも主演を務め、縦横無尽な演技力が話題となり快進撃が止まらない綾野剛。危機、裏切り、罠、そして最後に待ち構える衝撃のラスト…。
邦画史上類を見ない、手に汗握る極限のサスペンス・エンタテインメントが、スクリーンに描かれます。
映画『最後まで行く』公式サイト│大ヒット上映中!! (saigomadeiku-movie.jp)
あらすじ
年の瀬も押し迫る12月29日の夜。刑事・工藤(岡田准一)は危篤の母のもとに向かうため、雨の中で車を飛ばす。
工藤のスマホには署長から着信が。「ウチの署で裏金が作られているっていう告発が週刊誌に入ったが、もしかしてお前関わってるんじゃないか?」という淡島の詮索に「ヤバい」と血の気が引く工藤は、何とかその場をやり過ごしたものの、心の中は焦りで一杯になっていた。
そんな中、美沙子(広末涼子)から着信が入り、母が亡くなった事を知らされた工藤は言葉を失うが、その時、彼の乗る車は目の前に現れた一人の男を撥ね飛ばしてしまう。すでに彼が絶命していることが判ると、狼狽しながらもその遺体を車のトランクに入れ立ち去った。
途中、検問に引っかかるも何とかその場をごまかし署に辿り着いた工藤は、署長に裏金との関与を必死に否定し、その場を後にする。そして母の葬儀場に辿り着いた工藤は、こともあろうに車で撥ねた男の遺体を母の棺桶に入れ、母とともに斎場で焼こうと試みる。
その時、工藤のスマホに一通のメッセージが入る。「お前は人を殺した。知っているぞ」というその内容に、腰を抜かすほど驚く工藤。その後メッセージは「死体をどこへやった?言え」と続く。まさかあの晩、誰かに見られていたのか…?
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そのメッセージの送り主は、県警本部の監察官・矢崎(綾野剛)。彼もまた、ある男が行方不明となり、死んでいたことが判明し動揺していた。
そしてその男こそが、工藤が車で撥ねた人物だったのだ。さらにその裏には、矢崎が決して周囲に知られてはいけない秘密が隠されていた。
追われる工藤と、追う矢崎。果たして、前代未聞の96時間の逃走劇の結末は?そして、男の遺体に秘められた、衝撃の事実とは!?
評価点
- 登場人物に感情移入するタイプの映画ではない
- ブラックジョークに関しては賛否両論
- リメイクとしては良い改変
登場人物に感情移入するタイプの映画ではない
映画を楽しむポイントとして”共感”があると思いますが、本作は登場人物に共感というのは基本出来ないと思った方が良いかもしれません。
それも登場人物のほぼ全員がクズ野郎で身近で本作のキャラクターみたいな人がいれば距離を空けた方が良いレベルです。そのため本作はクズである登場人物がどのような結末を辿るのか見届ける楽しみ方が一番しっくりくると思います。
この点は、賛否分かれる点だと思います。キャラクターを好きになれない映画を上映時間118分も観てられないといった感想を抱く人も少なくないと思います。
しかし本作では、共感こそできませんが登場人物を興味深く描くことには成功しているため彼らがどのようなラストを迎えるのかは気になるのが不思議です。
ブラックジョークに関しては賛否両論
本作では、普通にギャグとして死体遺棄、轢き逃げ、汚職といった倫理的に狂った要素をギャグとして盛り込んでいます。
この点は観る人によっては笑える人もいれば、受け付けられず終始苦笑いを浮かべる人もいると思います。この作風は韓国版からの流れであるため仕方がない要素ではあります。
しかし邦画ではあまり見られないギャグ要素が満載であるため人を選ぶのは間違いありません。ギャグとしてのクオリティは笑える点が多かったため個人的には満足のいく作品でした。
キャラクターの個性が強く自分とは全く異なる思考であるため、割り切って観ることができていたからかもしれません。
リメイクとしては良い改変
本作では韓国版ではなかった改変を行っており、日本版として良い改変となっていると感じました。
改変が行われたポイントは主に後半の展開になりますが、良くある邦画の改変である無駄に時間を引き延ばす手法ではなく、上手く日本版として落とし込んでいる改変となっているので邦画になったことで改悪されたのではないかと心配している方は安心して観ることができると思います。
韓国版の時点で完成されていたので、余計な要素を取り入れるべきではないと感じる方もいるかもしれませんが………
総評
登場人物に感情移入できる映画を探している人には不向きな作品ですが、自分では到底理解できないクズ達がどのようなラストを迎えるのか見届ける楽しみ方は充分できる作品だと思います。
死体を母親の棺桶に隠したりと倫理的に受け付けられない行動を登場人物達が行うので、この不謹慎さが無理と感じられる方には全くオススメできません。しかし、これらのブラックジョークをフィクションだからと割り切って楽しんで観られる人にはオススメできる作品だと言えます。
作風から賛否分かれる作品なので人に勧めるのは、難しい作品ではありますが気になっている人は一度鑑賞を検討しても良い映画かと思います。