映画「ピーター・パン&ウェンディ」 レビュー
クオリティの向上よりポリコレの配慮
ディズニープラス独占映画である「ピーター・パン&ウェンディ」
僕はディズニーのアニメ映画の素晴らしいところは深みがあるが子供には理解し難い原作を子供から大人までも楽しめる作品に落とし込むことが非常に上手い点だと思います。
本作のピーターパンでは、過去のアニメ版ピーターパンが何故世界中の子供達から大人までも虜にした作品になったのか全く理解できておらず最近のディズニーの悪い部分のみが露骨に表面化してしまった作品となってしまいました。
僕にとって全くオススメできる作品ではありませんし、このレビューを読んでくださる皆様の貴重な時間を消費して観るに値しない作品であるためネタバレ全開で書かせていただきます。
作品紹介
1904年にスコットランドの作家J・M・バリーの戯曲および小説として発表され、1953年のディズニーアニメ版でも広く愛される「ピーター・パン」を、新たに実写映画化。大人になりたくない少年ピーター・パンと、ロンドンに住む少女ウェンディとその弟たちが夢の国ネバーランドで繰り広げる冒険を、ピーター・パンとフック船長の秘められた過去や、子どもと大人の間で揺れるウェンディの成長など、新たな視点も盛り込みながら描く。
幼いころから慣れ親しんだ家を離れることが不安な少女ウェンディが、大人になることを拒む少年ピーター・パンと出会い、弟たちや小さな妖精ティンカー・ベルも一緒に夢の国ネバーランドへと旅立つ。そこで彼女は邪悪な海賊の船長フックとめぐり合い、人生を変える危険な冒険へと乗り出していく。
監督は「ア・ゴースト・ストーリー」「ピートと秘密の友達」のデビッド・ロウリー。ピーター・パン役を映画初主演のアレクサンダー・モロニー、ウェンディ役をこちらも映画初主演となる、ミラ・ジョボビッチとポール・W・S・アンダーソンの娘エバー・アンダーソンが担当。ピーター・パンの宿敵フック船長役はジュード・ロウが務めた。Disney+で2023年4月28日から配信。2023年製作/106分/アメリカ
原題:Peter Pan & Wendy
配信:Disney+
不満点
- 気持ち悪いほどのポリコレ
- キャラクター崩壊
- アニメ版の魅力を理解していない
気持ち悪いほどのポリコレ
最近のディズニー映画の悪い傾向がポリコレを意識しすぎるあまり作品全体からまとまりがなくなってしまっていることだと思います。多様性を意識するのは自由ですが、作品のキャラクターを不必要に改変するのは違うのではないでしょうか。
例えば本作でのティンカーベル
これまでの作品でのイメージを大幅に変えてアフリカ系黒人女性にする必要があったのか大いに疑問です。作品にファンがいるように、キャラクターにもファンがいます。イメージを変えるというのは、そのキャラクターに思い入れのあるファンの人にも納得してもらえるような要素がなければ、安易にキャラクターのイメージを変えることはナンセンスだと思います。
他にもロストボーイズ
こちらも意味もなく女性に変更されており、この改変も物語に全く意味がなくただのポリコレへの配慮と捉えられても仕方がないと思います。誤解のないように言いますと、僕は改変が悪だとは全く思いません、作品を良くするための改変であるならある程度の改変は必要だと思っています。
しかし本作のような、作品のクオリティの向上のためでなくポリコレへの配慮のためだけに安易にキャラクターのイメージを大幅に変更するような改悪は全く必要ないと思います
キャラクター崩壊
キャラクターのイメージが大きく損なわれる要因はキャスティングだけの問題ではありません。
シナリオを初めキャラクターの描き方も全くもって作品への愛が感じられない点もマイナス点です。
例えばティンカーベルですがアニメ版の彼女は他人に嫉妬もするし、人間と同じように他人に怒りの感情も抱きます。そこが彼女の魅力であり人間味らしい部分だと思います。
本作のティンカーベルは嫉妬もしないし他人に対して怒りの感情を抱くこともない人間味のないキャラクターと改変されています。しかしフック船長に至ってはティンカーベルとは対照的にアニメ版のフック船長は純粋な悪として描かれていましたが、本作では人間味のあるキャラクターとして描かれています。
ティンカーベルはアニメ版であった人間味をなくし子供でも理解しやすいキャラクターに改変したのに対してフック船長はアニメ版よりも人間味のあるキャラクターへ改変と、どちらに寄せたいのか理解不能です。
アニメ版のように子供でも理解しやすい作品にしたいのなら、本作でいうところのティンカーベルに寄せるべきですし、原作に寄せたいなら本作のフック船長のような深みのあるキャラクターに全てのキャラクターを統一するべきだと思います。
アニメ版の魅力を理解していない
ディズニーのアニメ映画で共通の魅力は、原作のままでは子供から大人までの幅広い層へ向けたアプローチが難しい。特に子供達には原作のままでは理解し難く受け入れてもらうには非常に困難です。それをキャラクターや物語の描写を視聴者のための改変で原作のメッセージ性を残しながら幅広い層にアプローチし成功させてきたことがディズニーのアニメ映画の一番の魅力だと思います。
ピーターパンでは、子供だけが観ることのできる夢の世界”ネバーランド”を描きながら、しっかりと大人になるということの意味を暗示した。この改変が多くの人に受け入れられたのは原作を大事に視聴者に配慮した結果ではないでしょうか。
それに比べ本作の改変は視聴者に向けて作っているのか疑問です。ただキャラクターをクローズアップし深みを増せば良いというのは、原作のままでは受け入れてもらうのは難しいと判断し意図的にキャラクターを簡略化して描いたアニメ版の意図をまるで理解していないと言わざるを得ません。
総評
本作はの不満点は挙げればキリがないですが、特に大きな不満点は「ポリコレ」、「キャラクター崩壊」、「改悪」の3点であると思います。
多様性を意識するあまり作品としてのクオリティを上げることではなく、ポリコレを意識した作品作り、どの層へアプローチしたいのか全く理解できないキャラクター改変。ティンカーベルは簡略化し、フック船長は人間味のあるキャラクターへ変更。
子供に向けて作るのならティンカーベルに、大人に向けて作るならフック船長のようなキャラクターに全キャラクターを統一するべきだと思います。本作は全てにおいて中途半端です。
アニメ版のイメージとは全く異なるアフリカ系の黒人をティンカーベルにキャスティング、ロストボーイズを女性に変更。この変更が作品に意味をもたらすのであれば何も意見はありません。
しかし、これらの変更点はディズニーのいつもの多様性を意識したポリコレ改変なだけなのも本作が駄作である理由の一つであると思います。
気を配る相手は視聴者でありファンだと思います。一番重要なのはポリコレに配慮することではなくファンに受け入れてもらい、評価してもらえる作品を作ることではないでしょうか。