映画『シン・ウルトラマン』レビュー
”特撮・ウルトラマンシリーズが好きな人「だけ」が楽しめる。”
監督は樋口真嗣で企画と脚本は庵野秀明。
キャストは斎藤工、長澤まさみ、有岡大貴、早見あかり、西島秀俊、山崎一などとなっています。
結論から言いますと特撮、ウルトラマンシリーズに特に思い入れがない方にとっては全くオススメできない作品だと思いました。今回はオススメの作品ではないため「ネタバレはあり」となっていますのでまだ観ていない方は注意してください。
それでは映画『シン・ウルトラマン』レビューをそていきたいと思います。
作品紹介
日本を代表するSF特撮ヒーロー「ウルトラマン」を、「シン・ゴジラ」の庵野秀明と樋口真嗣のタッグで新たに映画化。庵野が企画・脚本、樋口が監督を務め、世界観を現代社会に置き換えて再構築した。「禍威獣(カイジュウ)」と呼ばれる謎の巨大生物が次々と現れ、その存在が日常になった日本。通常兵器が通じない禍威獣に対応するため、政府はスペシャリストを集めて「禍威獣特設対策室専従班」=通称「禍特対(カトクタイ)」を設立。班長の田村君男、作戦立案担当官の神永新二ら禍特対のメンバーが日々任務にあたっていた。そんなある時、大気圏外から銀色の巨人が突如出現。巨人対策のため禍特対には新たに分析官の浅見弘子が配属され、神永とバディを組むことになる。主人公・神永新二を斎藤工、その相棒となる浅見弘子を長澤まさみが演じ、西島秀俊、有岡大貴(Hey! Say! JUMP)、早見あかり、田中哲司らが共演。劇中に登場するウルトラマンのデザインは、「ウルトラQ」「ウルトラマン」などの美術監督として同シリーズの世界観構築に多大な功績を残した成田亨が1983年に描いた絵画「真実と正義と美の化身」がコンセプトとなっている。
2022年製作/上映時間112分/G/日本
シン・ウルトラマン : 作品情報 – 映画.com (eiga.com)
配給:東宝
不満点
- 物語全体に違和感がある。
- シナリオ構成に一貫性がない。
- 感動や熱くなれる要素がない。
物語全体に違和感がある。
本作でのウルトラマンは、怪獣と戦い命を落としたメンバーの身体を借りている状態です。つまり命を落とす前と、ウルトラマンが身体を借りている時期とでは。外見は一緒でも中身は別人ということです。
命を落とす前は正義感が強く、誰かの助けがあれば救助に向かうような性格で、ウルトラマンが身体を借りてからは感情の起伏がないような性格になっています。
しかし周囲の人達は誰もそこに違和感を感じている様子はありませんでした。しかし映画を観てる人たちには、その状況に違和感を感じると思います。こういった細かな心理描写の描き方の甘さが随所に感じ取れます。
シナリオ構成に一貫性がない
リアルにウルトラマンが現れたら、世界がどうリアクションするか最初の30分くらいまでの物語は悪くない展開だったと思います。しかしその後の展開は非常に厳しい評価にならざるを得ません。
全体的に総集編のような作りになっており、物語全体に自然な流れがなく幾つかの話を一本の映画にまとめたような作品です。
登場する外星人も複数います。最初に登場したヴィランは政治を使い国同士を戦わせて人類に破滅をもたらすといった非常に知性のあるキャラクターでした。始めはこのキャラクターが本作のメインヴィランなのかなと思いました。
しかし、ウルトラマンに倒されあっさり物語から退場していきます。その後の物語がどのように展開していくのかと思ったら、今度は兵器を提供し最初のヴィランとは別の方法で人類を破滅させようとするヴィランが登場、そしてウルトラマンに倒されあっさり退場。
感動や熱くなれる要素がない。
前述した一貫性のないストーリー展開、応援したくなる登場人物がいないことは映画にとって致命的であると思います。
感動は登場人物に感情移入できた場合にのみ生まれる感情
「応援したくなる人」、「憧れるような人」、「共感できる人」これらの登場人物が「シン・ウルトラマン」には欠けていると感じました。
また一貫性のないストーリーでいくら終盤に世界のために戦うウルトラマンといった展開を作っても気持ちは乗れないと思います。
展開も大事なことではありますが、キャラクターやシナリオ構成などしっかり序盤で土台を作っておかないと後半の展開が生きてこないと思います。
地面が今にも崩壊しそうな場所にどれほど価値のある建造物を建設しても、価値は見出せないのと同じです。
総評
特撮やウルトラマンシリーズに特に思い入れがない方にとっては全くオススメできない作品。
一貫性のないストーリー、物語全体から伝わる違和感、ストーリー展開の雑さは作品としてのクオリティを著しく下げてしまってると感じました。
巨大な力に対して日本がどう立ち向かっていくのか、コンセプトは非常に興味深いテーマであるにも関わらず映像以外の作り込みの甘さでそれを生かせてないのは非常に勿体ないと感じました。
当然、感想は人それぞれですので、自分と異なる感想を抱いた方を否定する気はありませんし寧ろ自分とは違う考えの方がいることは興味深いことだと思っています。