映画『ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー』 レビュー
”「宮本茂」というエンターテイメントの天才”
スーパーマリオシリーズ、ゼルダの伝説シリーズなどを手掛ける任天堂とミニオンズなどを手掛けるイルミネーションズの夢の競演によって実現したスーパーマリオの映画化。
本作において欠かせない存在、それはスーパーマリオやゼルダの伝説の生みの親である宮本茂の存在です。
この偉大な人物が制作に関わることで、スーパーマリオがゲームという枠組みを越えたとしても、作品の方向性は見失わず「マリオらしさ」を最大限引き出すことができると証明した作品だと感じました。
評価点を挙げながら、本作をオススメする理由を解説していきます。
作品紹介・あらすじ
世界的人気の任天堂のアクションゲーム「スーパーマリオ」シリーズを、「怪盗グルー」「ミニオンズ」「SING シング」シリーズなどのヒット作を手がけるイルミネーション・スタジオと任天堂が共同でアニメーション映画化。イルミネーション創業者で「怪盗グルー」シリーズなどを送り出してきたプロデューサーのクリス・メレダンドリと、マリオの生みの親でもある任天堂の宮本茂が製作に名を連ねる。
ニューヨークで配管工を営む双子の兄弟マリオとルイージが、謎の土管を通じて魔法に満ちた世界に迷い込む。はなればなれになってしまった兄弟は、絆の力で世界の危機に立ち向かう。マリオとルイージに加え、ピーチ姫、クッパ、キノピオ、ドンキーコング、ヨッシーなど原作ゲームシリーズでおなじみのキャラクターが多数登場する。
監督は「ティーン・タイタンズGO! トゥ・ザ・ムービー」でタッグを組んだアーロン・ホーバスとマイケル・ジェレニック、脚本は「ミニオンズ フィーバー」のマシュー・フォーゲル。オリジナル版の声の出演には、マリオにクリス・プラット、ピーチ姫にアニヤ・テイラー=ジョイ、ルイージにチャーリー・デイ、クッパにジャック・ブラックら。日本語版ではマリオを宮野真守、ピーチ姫を志田有彩、ルイージを畠中祐、クッパを三宅健太、キノピオを関智一が務める。2023年製作/94分/G/アメリカ・日本合作
ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー : 作品情報 – 映画.com (eiga.com)
原題:The Super Mario Bros. Movie
配給:東宝東和
評価点
- 失われない「マリオらしさ」
- 任天堂とイルミネーションズのベストマッチ
- マリオを知らない人でもマリオを知っている人にも楽しめる
失われない「マリオらしさ」
ゲーム作品の映画化は失敗する作品が多いです。それ何も考えずに闇雲にゲーム要素を取り入れて映画化してしまうケースと何故そのシリーズがユーザーから支持を得ているのか理解できておらず映画化してしまうケース。大きく分けてこの2パターンであると思います。
両方当てはまってしまうどうしようもない駄作「ドラゴンクエストユアストーリー」は置いておきましょう。
しかし本作「ザ・スーパーマリオブラザーズ・ムービー」は「スーパーマリオオデッセイ」、「スーパーマリオ3Dワールド」、「マリオカート8」など多くのマリオシリーズ要素を取り入れていながらも、それが1本の映画として完璧にまとめられています。
ただ闇雲にゲーム要素をぶち込んでいるのではなく、物語として自然と取り入れておりこれはマリオの生みの親である宮本茂さんが監修していることが大きいと思います。
またマリオの要素を取り入れながらも、マリオとシリーズをプレイしてきたプレイヤーをシンクロさせるシナリオは見事だと思います。
スーパーマリオシリーズをプレイしてきた人達は、失敗やミスをなんども乗り越えてステージやボス敵を突破していきます。この何度も「挑戦する姿」や「諦めない心」を持ちながらゲームをプレイするユーザーと、本作のマリオのキャラクター性は見事にシンクロしていると言えます。
本作は評論家からの支持は低く観客からの評価が高い作品だと記事がありました。これは評論家の方々がスーパーマリオというものを全く理解していないからだと思います。確かにマリオシリーズをプレイしたことがないのであれば急にカートに乗ったり、キノコやフラワーで強くなったり理解できないのは無理ありません。
しかしマリオシリーズを知っている人にとっては理解できることですし、マリオ要素が多いほど嬉しいのは事実。今後本作を視聴した人達からは評論家の人達の評価とは反対に絶賛されることでしょう。
任天堂とイルミネーションズのベストマッチ
本作を評価する上で欠かせないのは映像の美しさでしょう。背景からキャラクターまで全てが美しかったです。僕は3Dで鑑賞したのですが終始3D映えする映像でまるで飛び出してくるかのような映像は圧巻でした。
プロモーション映像で流れてた部分なので書かせていただきますが、マリオが初めてキノコ王国を訪れたシーンとドンキーコングと最初に出会うシーンは建物の中あるいは室内から一気に広大な世界や大迫力な映像へ切り替わるため、映像だけでも感動させられます。
後半の展開はネタバレになるので伏せさせていただきますが、後半のアクションシーンは映像としてのクオリティが非常に高く、さすがイルミネーションズだなと感心させられました。
マリオ達キャラクターの動きを監修しているモーション班の方々も「マリオ愛」が伝わってくるようで、宮本茂さんが監修してるのもあり一つも違和感のある箇所はありませんでした。
僕は本作を観て感動しましたが、そのほとんどが制作スタッフの人達全員が「スーパーマリオ」の映画を良い作品にしよう、マリオファンに納得してもらえる作品を作ろうと思って制作している姿が作品を通して伝わってくるからでした。
マリオを知らない人でもマリオを知っている人にも楽しめる
評論家の方々は置いておきまして、本作はマリオシリーズを知らない人達にもオススメできる作品となっています。おそらく本作は家族で観に来る人が多い作品だと思いますが、マリオを知らない人でもマリオを知っている人にも楽しめる作品となっているので安心して観に行けます。
もちろん「マリオシリーズ」を知っている人であればより楽しめることは間違いありません。さらにドンキーコングシリーズをプレイしたことがある人にも嬉しい要素が本作にはあります。
ドンキーコングが登場することはプロモーション映像を観た人は知っていると思いますが。最初にマリオとドンキーコングが出会うシーンのある音楽、任天堂とレア社の関係もあって作品内で聴くことはないと思っていた音楽が聴けたときは、そこまでファンサービスしてくれるんだと思いました。
またルイージマンションを彷彿とさせるシーンもあり、映画としてのクオリティが高いだけでなくファンサービスも様々なシーンに盛り込まれています。
シナリオ、映像、音楽など様々なところに、任天堂の自社IPを大切に思う姿勢とイルミネーションズのマリオの映画を名作と呼ばれる作品にしたいという気持ちが伝わってくるようで老若男女問わず全ての人にオススメしたい作品です。
総評
1本の映画としても完成度が高くマリオ作品としても完成度が高い。「マリオらしさ」は残しつつも映画として綺麗にまとまっている。
シナリオ、映像、音楽全てにおいて完成度の高い作品だと自信を持って言えます。
シナリオはシンプルではありますが、対象とする年齢層が広い本作においては心理描写の方に時間を割くよりもファンの喜ぶ要素を取り入れた演出に力を入れるべきだと思いますので、本作の方向性は正しいと思います。
これ程までに、ファンサービスを盛り込んでいるにも関わらず作品として破綻していないのは任天堂とイルミネーションズの制作陣、そしてマリオの生みの親である「宮本茂」の存在が大きいと思います。
宮本茂さんが「ゲームクリエイターの天才」であることは随分前から知っていましたが、本作の鑑賞後「エンターテイメントの天才」としてゲームに限らず、全てのジャンルにおいての天才だと認識を改めました。