2023.10.11 2023.11.12

映画『鹿の王ユナと約束の旅』レビュー

レッド

”ジブリを意識したが、ジブリの足元にも及ばない”

『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『君の名は。』のアニメーター安藤雅司が監督で制作陣にも名のある優秀な人が揃っているため公開前から非常に楽しみにしていた作品でした。

しかし、蓋を開けてみたら期待とは正反対な作品で『もののけ姫』の二番煎じのような作品となってしまっており非常に残念な作品でした。

ネタバレは多少ありますので一応ネタバレ注意とさせていただきます。

それでは映画『鹿の王ユナと約束の旅』のレビューをしていきたいと思います。

1 作品紹介・あらすじ
- 1.1 作品紹介
- 1.2 ストーリー
2 感想
3 総評

作品紹介・あらすじ

作品紹介

「鹿の王」、それは仲間のために命を懸けて戦う者たちのこと―― 。

『もののけ姫』『千と千尋の神隠し』『君の名は。』の異才アニメーター安藤雅司が監督デビュー作で挑んだのは、
2015年に本屋大賞を受賞したものの、その圧倒的スケールの物語から長らく映像化は不可能と言われきた
ファンタジー原作「鹿の王」（角川文庫・角川つばさ文庫／KADOKAWA）。
過酷な運命に翻弄される登場人物たちと、謎の病の壮大な戦いが日本アニメ界最高峰のスタッフによって描かれる。
今この時代だからこそ観るべきエンターテインメント超大作がここに誕生！
映画『鹿の王ユナと約束の旅』公式サイト (shikanoou-movie.jp)

ストーリー

かつてツオル帝国は圧倒的な力でアカファ王国に侵攻したが、
突如発生した謎の病・黒狼熱（ミッツァル）によって帝国軍は撤退を余儀なくされた。
以降、二国は緩やかな併合関係を保っていたが、アカファ王国はウィルスを身体に宿す山犬を使って
ミッツァルを再び大量発生させることで反乱を企てていた。
ミッツァルが国中で猛威を振るう中、山犬の襲撃を生き延びたヴァンは身寄りのない少女ユナと旅に出るが、
その身に病への抗体を持つ者として、治療薬開発を阻止したいアカファ王国が放った暗殺者サエから命を狙われることになる。
一方、治療薬を作るためヴァンの血を求める医師のホッサルも懸命にヴァンを探していた―― 。
様々な思惑と陰謀が交錯した時、運命が動き始める。
映画『鹿の王ユナと約束の旅』公式サイト (shikanoou-movie.jp)

[商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。]

鹿の王 1 （角川文庫） [ 上橋　菜穂子 ]
価格：704円（税込、送料無料) (2023/10/26時点)

楽天で購入

感想

物語は、主人公が奴隷として働かされておりある日山犬に襲われる。山犬に嚙まれると死に至る病気を発症してしまう。しかし主人公は山犬に噛まれても病を発症せずに、同じく山犬の襲撃から生き残ったユナと逃げ出すところから始まります。

本作の問題点はキャラクターに魅力がないこと、専門用語が多くて物語に集中できない点だと思います。

主人子であるヴァンは自分の感情を言葉に出すシーンがあまりなく感情移入しずらいキャラクターとなっています。その主人公は鹿の王の候補に選出されており、鹿の王は山犬たちを操り自然を操る力を得ることができます。

山犬に噛まれて発症する病気を「黒狼病」と呼ばれているらしいのですが、キャラクターたちはこの病気を「ミッツァル病」という通称で呼んでおり、映画を通してこのような作品独自の専門用語が次々と出てきて理解することが多くて物語に入り込めないため、宣伝や作風がジブリを意識していながらも子供から大人までも楽しめる作品とは到底言えないと思います。

物語の展開も唐突なことが多く時系列が一気に進んだりして、物語の展開も自然ではなくこの点も本作に気持ちが入り込みにくい原因になっているのだと感じました。

原作では、丁寧に描写されていても映画という尺に何とか収めるため苦肉の策で無理やり詰め込んだのが随所で見受けられ、それがこのような説明不足で時系列の変化が不自然な作品になってしまったのだと思います。

また至る所にスタジオジブリ作品の『もののけ姫』を連想させる描写が多々あり、『もののけ姫』の二番煎じになってしまっているのも残念なポイントです。

ヤックルみたいなピュイカという鹿や、ヴァンの能力を使う時の光る右手など『もののけ姫』を意識しているのが伝わってきますが、作品としてのクオリティは『もののけ姫』の足元にも及びません。

鹿の王水底の橋（角川文庫） [ 上橋　菜穂子 ]
価格：880円（税込、送料無料) (2023/10/26時点)

楽天で購入

総評

実績があり、名のある制作陣が制作したということで公開前は非常に期待していた作品ですが、蓋を開けてみればスケールの大きい作品を無理やり映画に収めただけの残念な作品となっており、それに伴いキャラクターに魅力がないことから約２時間という上映時間が非常に退屈な時間となってしまいました。

また専門用語がやたらと多く理解するのも大変だし、理解したくなるようなストーリー構成でもないため、これなら原作を読んだ方がよっぽど有意義な時間になると鑑賞している最中ずっと考えてしまいました。

またスタジオジブリ作品である『もののけ姫』を強く意識しているのにも関わらず、影響を受けているのはキャラクターデザインや設定、描写などの表面的な部分だけで、大人から子供まで楽しめるように作り込まれたスタジオジブリの遺伝子的なものは一切受け継がれていないため、ただの劣化にしか見えないのが一番残念なところでした。