映画評価

映画『竜とそばかすの姫』レビュー

レッド

”肝心なストーリーが致命的”

監督と脚本は細田守。

細田守監督の印象としましては、アニメーターとしての才は確かなものだと思いますが、脚本のセンスが致命的という印象です。

特に本作『竜とそばかすの姫』と前作の『未来のミライ』は脚本によって賛否が分かれてしまった惜しい作品となっていました。

それでは映画『竜とそばかすの姫』のレビューをしていきたいと思います。

ネタバレはありとなっていますので、まだ観ていない人はネタバレ注意でお願いします。

作品紹介・あらすじ

「サマーウォーズ」「未来のミライ」の細田守監督が、超巨大インターネット空間の仮想世界を舞台に少女の成長を描いたオリジナル長編アニメーション。

高知県の自然豊かな田舎町。17歳の女子高生すずは幼い頃に母を事故で亡くし、父と2人で暮らしている。母と一緒に歌うことが大好きだった彼女は、母の死をきっかけに歌うことができなくなり、現実の世界に心を閉ざすようになっていた。

ある日、友人に誘われ全世界で50億人以上が集う仮想世界「U(ユー)」に参加することになったすずは、「ベル」というアバターで「U」の世界に足を踏み入れる。仮想世界では自然と歌うことができ、自作の歌を披露するうちにベルは世界中から注目される存在となっていく。そんな彼女の前に、 「U」の世界で恐れられている竜の姿をした謎の存在が現れる。主人公すず/ベル役はシンガーソングライターとして活動する中村佳穂が務め、劇中歌の歌唱や一部作詞等も務めた。

謎の存在「竜」の声は佐藤健が務めた。ベルのデザインを「アナと雪の女王」のジン・キムが担当するなど、海外のクリエイターも参加している。

2021年製作/上映時間121分/G/日本
配給:東宝

竜とそばかすの姫 : 作品情報 – 映画.com (eiga.com)

感想

本作では作画や音楽などは非常に高いクオリティとなっているのですが、ストーリーとキャラクターに関しては決して褒められたものではありませんでした。

細田守監督はアニメーターとしての才能は素晴らしいが、本作と『未来のミライ』のストーリー構成を見ると脚本家としてのセンスは全くないと感じました。

描きたいことは匿名性のあるインターネットにおいて、匿名であることを良いことに他人を誹謗中傷することの問題とインターネットのもつ可能性とインターネットの陽の部分と陰の部分を描いているように感じます。

しかし、ストーリーとキャラクターと設定と映像と音楽以外の部分が崩壊してしまっているため、描きたいことが全く心に響きませんでした。

「U」という空間の設定も曖昧、すずの歌声が億という人々の心に刺さり人気がでるのもリアリティがないですし、竜がネットで嫌われている理由もほとんど語られません。

また終盤ではではすずが竜の正体を知り助けに行く展開になります。その先にはDVをしている大人の男性が居ることを知っていながら、すず一人を送り出す周囲の人達には理解ができませんでした。

普通なら、女子高生が力で敵うはずないのだから周りの人達もすずと一緒に行ってあげたら良いのに平気な顔で送り出す。ラストの展開のためにキャラクターの知能を下げる手法は本当にやめた方が良いと思いました。

匿名であるという理由から現実世界で全く行動を起こさないことに対する問題提起をしていながら、匿名ということを自ら捨てて行動しているのが主人公だけで、他の連中は行動しないなら作品のテーマが全く描けていないのと一緒です。

総評

本作での感想は、細田守はストーリーを作るセンスがないということ。細田守の作品で名作と感じる作品が『時をかける少女』、『おおかみこどもの雨と雪』、『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』なのですが、これらの全ての作品が脚本家がストーリーの構成を行っているということ。

設定の掘り下げが全くできていないですし、キャラクターもストーリーの展開の都合によって知能レベルが下げられてしまっているように感じました。

美女と野獣のオマージュもありましたが、それもこの作品には必要性も感じませんでしたし一体何のためにいれたのか分かりませんでした。設定など意識しているところがあるのは感じましたが、見た目で誤解されている野獣に対して本作の竜は彼の行いが原因で嫌われているので上っ面だけをオマージュしているようにも感じました。

作品のテーマ性もクライマックスの展開で台無しで、匿名性のあるインターネットにおいて、匿名であることを良いことに他人を誹謗中傷することの問題とインターネットのもつ可能性という描きたいことが全く心に響いてきませんでした。

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