映画『空の青さを知る人よ』レビュー

作品紹介・あらすじ

解説

埼玉県・秩父を舞台に描いた「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「心が叫びたがってるんだ。」の監督・長井龍雪、脚本家・岡田麿里、キャラクターデザイン＆総作画監督・田中将賀が再結集し、前2作同様に秩父を舞台にオリジナルストーリーで描いた長編アニメ映画。秩父の町に暮らす高校生の相生あおいは、進路を決める大事な時期なのに受験勉強もせず、東京へ出てバンドをやることを目指して大好きなベースを弾いて毎日を過ごしていた。あおいには唯一の家族である姉のあかねがいるが、2人は13年前に事故で両親を亡くしており、当時高校3年生だったあかねは恋人・金室慎之介との上京を断念して地元で就職し、妹の親代わりを務めてきた。あおいは自分を育てるために多くのことを諦めた姉に対し、負い目を感じていた。そんなある日、町の音楽祭に大物歌手の新渡戸団吉が出演することになり、そのバックミュージシャンとして、あかねと別れたきり音信不通になっていた慎之介が町へ帰ってくる。時を同じくして、まだあかねと別れる前の慎之介が、13年前の過去から時を超えてあおいの前に現れる。吉沢亮が慎之介、吉岡里帆があかね、松平健が新渡戸団吉の声を演じるなど豪華俳優陣が声の出演。

2019年製作／108分／G／日本
配給：東宝

空の青さを知る人よ : 作品情報 – 映画.com (eiga.com)

感想

本作のストーリーからは脚本家の岡田麿里さんらしさを至る所に感じられる作品となっています。あおいの視点、しんのの視点、あかねの視点、しんのすけの視点とそれぞれのキャラクターの視点で人間味溢れる感情を登場人物たちから感じとることができます。

この映画では過去の超平和バスターズのスタッフが手掛けた作品よりも対象年齢を上げて30代くらいの層をメインターゲットにしているように感じる。それは慎之介のストーリーを観ればそれを強く感じる。

慎之介は大きな夢を抱いて町を出たのだけど、思うようにいかずに中途半端なところで妥協して生きています。そんな慎之介がしんのという自分自身と向き合うことで一歩踏み出す。30代という年代はある程度人生が決定づく年齢でもあります。しかし決して自分の人生を覆すことが不可能な年齢ではありません。慎之介のキャラクター設定と、置かれている状況は30代またはアラサーの人には刺さる設定だと感じる。

また、この映画で同じくらい重要な物語となるのがあおいとあかねの物語。映画のタイトルでもある「空の青さを知る人」これはあかねを指す言葉で、物語の中であかねの好きな言葉として度々「井の中の蛙大海を知らずされど空の青さを知る」という言葉が出てくる。

あかねは秩父から出て行かない。そのため広い世界を知らないしかし秩父にいる妹であるあおいという大切な存在を知っているということだと思う。それだけ自分のことを気にかけてくれている姉の幸せと自分の幸せどちらを優先するのかというのがあおいの物語の流れ。

物語の根幹はあおいがあかねの自分への愛に気付く物語。あおいはしんのが好きで、あかねと慎之介が結ばれてしまうとしんのが消えてしまう。あかねの幸せを考えるならお互いが惹かれあっているあかねと慎之介の恋を応援すること。しかしそれは自分の恋心を犠牲にすること

自分と一緒にいることを何よりも幸せだと思ってくれているあかねの愛を知り、自分の恋心と姉の恋心どちらを優先するか揺れながらも前に進んでいくあおいの姿には心が掴まれました。これは実際に鑑賞して体感してほしいです。

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総評

超平和バスターズの作品ということもあり間違いなく傑作級の作品です。人間の感情が爆発するシーンが多く、それと同時に共感することができるのは本当に制作陣には感服させられます。

それぞれの登場人物の視点から、異なるストーリーを展開させていき最後は綺麗に映画のタイトルでもある「空の青さを知る人よ」に集約させていく。

脚本、作画、音楽、演出と全てにおいて完成度が高く、本当に隙のない作品だと感じました。異なる視点で物語を展開させているのにも関わらず最後まで映画に釘付けさせられるのは、キャラクター全てに魅力があり共感できるからだと思います。

「あの日見た花の名前を僕達はまだ知らない。」「心が叫びたがってるんだ。」の過去2作が好きで本作に興味を抱いた人は間違いなく必見ですし、青春映画で傑作級の作品を探している人は絶対に観るべき映画だと思います。

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