映画『クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』レビュー
”クレしんに青春ミステリーを盛り込んだ傑作”
クレヨンしんちゃんという作品に青春ミステリーというジャンルを盛り込んできた本作、今までとは異なる視点でしんちゃんと風間君の友情を描いており青春映画としてもミステリー作品としてもクレヨンしんちゃんという作品の持ち味が最大限発揮された映画だと感じました。
ネタバレは多少含みますが、物語の根幹となる部分のネタバレはしていません。ですが一応ネタバレ注意とさせていただきます。
それでは映画『クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園』レビューをしていきたいと思います。
作品紹介・あらすじ
作品紹介・あらすじ
人気長寿アニメ「クレヨンしんちゃん」の劇場版29作目。シリーズで初めて学園ミステリーの要素を取り入れ、しんのすけたちが体験入学で訪れたエリート学校で、謎の怪事件に巻き込まれていく姿を描く。風間くんの誘いで全寮制の超エリート校「私立天下統一カスカベ学園」(通称:天カス学園)に1週間、体験入学することになったしんのすけたち。体験入学で良い成績を収めれば正式に入学できると聞いた風間くんは、みんなで一緒に天カス学園に入学することを夢見る。
しかし、その風間くんが、お尻に奇妙な噛み跡をつけられた姿で倒れているところを発見される事件が発生。さらには、カスカベ防衛隊で一番のエリートのはずの風間くんが、目を覚ますとおバカになっていた。
この事件を解決するため、しんのすけたちは、天カス学園の落ちこぼれ生徒会長・阿月チシオとともに「カスカベ探偵倶楽部」を結成。学園内に残されたメッセージと目撃証言から容疑者が浮かび上がるが……。監督は「クレヨンしんちゃん」のテレビシリーズや劇場版を多数手がける高橋渉。脚本も同じく「クレヨンしんちゃん」シリーズに多く関わる、うえのきみこ。
2021年製作/上映時間104分/G/日本
映画クレヨンしんちゃん 謎メキ!花の天カス学園 : 作品情報 – 映画.com (eiga.com)
配給:東宝
感想
本作ではしんちゃんと風間君の友情に焦点が当てられており、真逆の性格の二人の親友とも呼べる関係を見事に描き切った作品だと思いました。しんちゃんは自分の気持ちに正直に生きており、風間君は基本的に真面目な性格で物事を一歩引いた目線で見ていることが多い性格でお互い正反対な性格をしています。
そんな一見性格が合わなそうな二人の友情に一歩踏み込んだストーリーとなっています。風間君はエリートの道に憧れていますが、しんちゃんを初めマサオ君やねねちゃん、ボーちゃんはエリートの道には興味がありません。進みたい道が異なりますが風間君にとっては道が違ってもずっと友達でいたいという気持ちも捨てられません。
青春とは、それぞれ違った選択や進む進路によって人間関係に変化が生じたり、いつかきてしまうかもしれない別れ、本作では、そういった今までのクレヨンしんちゃんでは描かれたことのない視点から友情というテーマを描いています。
野原一家でもしんちゃんのいない日常を描写しており、これもいつか来るかもしれないしんちゃんの巣立つ日、それを暗示するように物語に入れてきています。本作のメインであるのはしんちゃんと風間君の関係ですが、スポットの当たりにくい野原一家にもしっかりと役割を与えている点は本当に見事でした。
AIによって学園全体が管理されている世界観も、AIにとっては不要なことでも人間にとっては大切なこと、まさに本作で描こうとしているテーマにもつなげてくるのも脚本家や監督の手腕が発揮されたところだと感じました。
ミステリーとしても子供向けだからと舐めた展開にはしておらず、伏線が様々なシーンに散りばめられており後出しじゃんけんのような質の悪いミステリーとは違い、観てる人も一緒に考えながらストーリーを楽しむことのできるように作られているため子供はもちろんですが大人も楽しめる作品となっています。
ストーリー後半のしんちゃんと風間君の友情と青春を盛り込んだラストシーンは必見です。
総評
クレヨンしんちゃんで青春ミステリーというジャンルに挑戦すること自体が前代未聞ですが本作では、青春としてもミステリーとしても子供から大人まで楽しめる傑作に仕上げてきています。
登場人物も非常に多いですが、全ての登場人物に活躍の機会が与えられておりキャラクターを上手く回せていますし、個性もしんちゃん達と比較しても濃いキャラクターばかりですので観ていて楽しい気持ちにさせてくれます。
いつかくるかもしれない、「しんちゃんと風間君の関係の終わり」「野原一家から巣立ってしまうかもしれないしんちゃん」を設定の中で自然と感じられるように作られていて、作品が学園をメインで描いていることもあってスポットの当たりにくい野原一家にも重要な役割を与えている点は本当に素晴らしいと思いました。
老若男女問わず誰でも楽しめるように、青春としても、友情をテーマとした映画としても高いクオリティの映画となっているので最近のクレヨンしんちゃんの映画の中でも頭一つ抜けて傑作だと思います。